1・中道は難しい

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1・中道は難しい

 その人との出会いは最悪だった。  それはもう、これ以上ないというくらいに最悪だった。  近所のお寺に若くてイケメンなお坊さん、いわゆる美坊主がやって来たというので、私はどんな人なのだろうと興味本位で見に行ったのが、そもそもの間違いだった。  お寺に咲く枝垂桜の下。そこにいたお坊さんは確かにイケメンで、めちゃくちゃ格好よく、しかも背も高くてすらっとした人だったのだが―― 「ちっ」  私の顔を見て数秒、なんと舌打ちしたのである。お坊さんが舌打ち。それだけでも衝撃的なのに、明らかに私の顔を見てやったというのが、何よりもショックだった。  そしてそのお坊さんは不快なものが目に入ったとばかりに、そそくさと本堂に消えてしまったのである。 「なっ、何なの、顔はいいかもしれないけど、くそ坊主じゃん!」  私は思わずそう叫び、お寺から逃げるように帰っていた。以後、二度とこの寺に近づくかと思っていたのだが、運命の歯車というやつは無情にも、このくそ坊主と縁があるように動いていくのだった。
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