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「えーと....、その心は」
「先輩、僕と漫才やりながらじゃないと喋れないんですか?まぁ別にいいですけど。理由らしい理由はないですけど...先輩結構ニキビ気にしてたじゃないですか、それなくなりましたよね?」
本当によく見ているなぁと思った。
元から彼に対してはよく見てるという感想は何度も出てきたがまさか自分の肌まで見られてるとは思わず唖然としてしまった。
「先輩が使った後の会社のパソコン画面にスキンケア方法のページ残ったままのを見かけたこともありましたし努力したのかなぁって思って」
「え、まじ」
「まじです、見かけたのが僕で良かったですね。ちゃんと消しておいてあげましたよ」
詰めが甘いと昇進できませんよ
なんていらん一言を添えるのがまた彼らしい部分ではあるが今の私はただ嬉しい感情だけが取り巻いて何も気にならなかった。
「ぶっちゃけスキンケア死ぬほど頑張ったからそう言われると嬉しいけど...まさかヒビキくんにそんなこと言われるなんて思ってなかったから驚いちゃった」
「僕、先輩のことよく見てるんで」
「ヒビキくんはすごいね、何でもしっかり見てて」
私なんてダメダメだ〜、と笑いながら唐揚げを口に入れる。ヒビキくんがかけてくれたレモンがより唐揚げの美味しさを引き出していて箸が進む。
そんな私を他所目にヒビキくんが口を開く
「“何でも“は僕も見れませんよ。僕が見てるのは先輩だけです」
「え?」
「僕が見てるのは先輩だけです」
私の箸から唐揚げが落ちた。
この後輩が何を言っているのか一瞬理解ができず反応できなかったが彼は2回も「私を」見ていると言った。
しかしそれがどういう意味を指すのか分からない。いや、分からないと言ったら嘘になる。確信が得られない。
返す言葉を探して口をパクパクさせている私を待たずにヒビキくんはそのまま話を進める。
「そもそも僕がいくらできる男だったとしてもその辺の女の肌の調子まで気付けると思いますか?絶対無理ですよ僕は未来の医療ロボットですか。察しの悪い先輩だな、まぁそこも含めて憎めない所ではあるんですけど」
急に私の悪口が始まったと思えば彼はそんな私を憎めないと言う。
「キレイになった理由は気にくわないですけど僕にとっては嬉しい誤算です。先輩、僕と付き合ってくれませんか?」
「え?」
「さっきから聞こえてるのに聞き直さないでくださいよ...言ってるこっちだって恥ずかしいんですから」
と口元をポリポリ掻く仕草は少女漫画の一コマのようだった。
「僕と付き合って先輩」
急に身体の体温が上がるのが自分でも分かる。今まで普通に見れていたヒビキくんの顔がうまく見れなくて咄嗟におしぼりで顔を隠す。
「え、先輩?聞いてましたか僕の話。ちゃんと向き合ってくださいよおしぼり置いて」
おしぼりを持つ両手の手首をヒビキくんに掴まれて余計に心臓が跳ねる。
「ちょっと先輩?恥ずかしいの分かりますけど照れてるならその顔僕に見せて下さいよ、あとちゃんと聞いてましたか?ねぇ」
それどころではない、今までよく周りを見てるなと思っていたが彼がよく見ていたのが自分だったと思うだけでも恥ずかしいのにこの追い討ち。
「先輩ー?ちょっとー?」
声を絞り出せ、私
きいてるよ!ヒビキくん
終
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