2、トジミミ

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大人の男の掟として、胸に蛇の刺青を入れることも無く 村人から一人前の男として扱われていないのだが、 村の女達は、トジミミの利口なことを知っていて 頼りにしているところが有った。 村の男たちが耳を傾けないような悩み事を 身ぶりでトジミミに打ち明ける。 すると、トジミミは判るまで熱心に心を傾けた。 女たちは、潜り漁から戻って 冷えた身体を温めるために祓い場によるから、 湯を沸かして待っていた。 それは、子供のころからトジミミの役目で、 そのための水汲みのせいで上腕や胸が、 刺青の男たちに負けないほど逞しく発達していることも 村の女たちは知っている。
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