2、トジミミ

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トジミミは、ウツロ船の女を苫の上に横たえ 炉に火をおこし、真水を沸かした。 火を焚いてしばらく、女の体が温まりだして 濡れた衣から湿気が上がりだした。 トジミミは冷え切った女の四肢を 自分の膝の間にはさんだり両手で摩る。 次第に青ざめた唇に血の気が上がってきた。 女の太ももが、ときどき痙攣する。 それに励まされるようにトジミミは女を温め続けた。 体温が上がってきて、 芥子の匂いに、女の甘い体臭が混ざりだした。 ついに、一時もしないうちに女は眉根を寄せ 小さなうめき声を漏らし 切れの長い目を薄く開けた。 ケシのせいで、瞳が大きく広がり、黒くうるんでいる。 うっ、と言って大きく息を吸ったので、 衣の下で白い胸が盛り上がった。 完全に目が覚めたようだ。 トジミミは女の顔を覗き込む。 そのとき背後から気配を感じた。 振り向くと 意識を取り戻したウズミネが立っていた。 「おまえ、カゼヨミだな」 トジミミは口の動きが読めるのだが、 はて、ここは白痴を装うべきか‥。
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