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トジミミは、ウツロ船の女を苫の上に横たえ
炉に火をおこし、真水を沸かした。
火を焚いてしばらく、女の体が温まりだして
濡れた衣から湿気が上がりだした。
トジミミは冷え切った女の四肢を
自分の膝の間にはさんだり両手で摩る。
次第に青ざめた唇に血の気が上がってきた。
女の太ももが、ときどき痙攣する。
それに励まされるようにトジミミは女を温め続けた。
体温が上がってきて、
芥子の匂いに、女の甘い体臭が混ざりだした。
ついに、一時もしないうちに女は眉根を寄せ
小さなうめき声を漏らし
切れの長い目を薄く開けた。
ケシのせいで、瞳が大きく広がり、黒くうるんでいる。
うっ、と言って大きく息を吸ったので、
衣の下で白い胸が盛り上がった。
完全に目が覚めたようだ。
トジミミは女の顔を覗き込む。
そのとき背後から気配を感じた。
振り向くと
意識を取り戻したウズミネが立っていた。
「おまえ、カゼヨミだな」
トジミミは口の動きが読めるのだが、
はて、ここは白痴を装うべきか‥。
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