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(相手が女なら、力になって味方にしろ
男なら、白痴のふりをして警戒させるな)
トジミミが一人で生きてゆくための母の教えだった。
さて
どう振る舞うべきか、迷っているうちに
「この女を館に運ぶから
オマエにもついてきてもらう」
トジミミが白痴でないことをウズミネは既に見抜いていた。
そして懐から木片を取りだし唇にあてた。
それは一種の呼子(よぶこ)で
常人の耳には聞こえない音を響かせる。
暫くして十人ほどの人影が浜の後ろに広がる松林から
朝霧にまぎれるように現れた。
それはウズミネの肝入りの間者(かんじゃ)だった。
間者たちはウズミネの手足、目、耳となって
人の通らない山道を縦横無尽に渡り
遠くヤマトまで行き来している。
ウツロ船の女は、間者に担がれて
トジミミも取り囲まれ
ウズミネの屋敷に連れて行かれたのだった。
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