3、ウズミネの屋敷

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3、ウズミネの屋敷

ウズミネの館は ムナカタの入り江を抱きかかえる二つの岬のうち 小高い丘のある岬の付け根にある。 夜も更けてから 普段は使われずひっそりしている奥の離れに 明かりが灯され、仄かな明かりが漏れている。 例の女が運ばれ寝かされているのだ。 そこに続く渡り廊下を 白髪の小柄な老婆とウズミネが夜闇に紛れ、渡ってゆく。 老婆はタンラ(耽羅)の生まれ巫女で 宇佐のヤハタ神殿に仕えている。 当時、朝鮮半島に分立する国々の、いずれの言葉も解すので 漂着した女の素情を知るために呼ばれてきたのだった。 二人が離れに入ると 女は婢(はしため)に助け起こされ、 ようやく床の上に座った。
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