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「シルラのホトケは、
倭人の神とは、全く違うものでございます…」
沙羅は続けた。
「その優し気な、美しい姿に人の心は
救われ、頼るのでございます。
ホトケのもとに集うと
人は、非常に強くなるのです。
人は、強い、恐ろしいものに仕えるより
美しく、優しいものに仕えた方が
心が強くなる生き物なのです。
その、ホトケの住むところが
ポンタルラ(不駝洛)でございます。
この女はポンタルラを目指して
海に出たのだと申しております」
「舵も櫂もないあの船で
異国を目指したというのか?」
「はい…つまり
生きては、たどり着けない国でございます」
「…死ぬために、海に出たと?」
女はホトケの国を目指してケシで眠り
ウツロ船で1人荒海に出たものの
一命を取り留め、この地に流れ着いてしまったのである。
その運命の哀しさに
身をよじって、今、泣き伏しているのだった。
「大丈夫
このウズミネ様が、あなたをお助けいたしますよ
ここがポンタルラだと思って
安心していらっしゃい」
沙羅の乾いた手は女の冷たい手をずっと包んで摩っていた。
「名前は何と言うのだろう」
「オキツ、と申すようです」
ウズミネは、この女、オキツが
今、自分が置かれてる窮地を
助けるカギになるような、気がしていた。
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