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入り江の両端の岬周辺は
大型の船が停泊するのに十分の深さが有る。
それが、ここを古くから良港とした理由である。
ムナカタの地は
シルラ(新羅)、ペクチュ(百済)、タンラ(耽羅)、カラ(加羅)など
小国が分立する朝鮮半島へ繋がる重要な海路の出発点でもあり
対馬暖流の潮目がぶつかる、豊かな漁場でもある。
その漁場と、半島へ続く玄海の道を、
縦横無尽に行き来する海人「ムナカタ衆」を束ねてきたのが
ウズミネの一族だった。
「ムナカタ衆」…
成人に達した男子は、
胸に蛇の文様を刺青する習わしのためにそう呼ばれた。
その蛮勇に対する畏怖と差別を込めて、
倭でも朝鮮半島の国々でも、彼らは「ムナカタ」と呼ばれている。
(また降り出したか)
ウズミネはぽつりと頬に落ちたものを掌で確かめる。
雲がめまぐるしく色を変えて
飛ぶように流れているのを見上げると
その雲間に、珍しい二重の虹が現れ
先端を波間に落としているのに気づいた。
(奇妙な虹だ…見たこともない)
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