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そして、ウズミネは
二重の虹の端が落ちたあたりの波間に
黒い点が揺らめいているのを、みとめたのだった。
(まさか…この荒れた海に船を出す者がいるはずはないが)
目を凝らす。
黒い点は波に揺られながら
だんだん近づき大きくなってくる。
それ自体の意思が有るかのようにスルスルと
入江に滑り入り、一直線に海岸に近づいて来る。
今や、それは疑いようもなく、
一艘の丸木舟であることが分かった。
波斬りのために両端が跳ね上がるように削られた丸木舟。
人影は、ない。
というか、どうやら天蓋のはまった「ウツロ船」のようだ。
そして、それはついに、砂浜に打ち上げられたようだった。
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