1、漂着

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上半身を横向きに捻り 膝を緩く立てて顔とは反対に倒していたので、 かたく盛り上がった胸と腰の細さが強調されていた。 横向きの白い顔が、暗い船の中で輝くようである。 際立った鼻梁と長い首が、高貴な生まれの証に思えた。 腰から太ももにかけては若さがみなぎっている。 軽く握って頬の横に投げ出された手が細くしなやかで、 女が明らかに労働しない階級であることを示している。 見下ろしていたウズミネは急に悪寒に震えた。 指先が僅かにしびれ、視界もかすむ。 (これは…瘴気!) この、強い芳香が原因だろう。 慌てて後ずさり、鼻と口を覆ったが手遅れであった。 気が遠のき、視界がゆらりとしたが最後 ウズミネは濡れた砂の上に崩れて、 後は混濁の淵に沈んでしまった。
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