16、ヤマト オオキミの宮殿

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「今朝、ムナカタのアコヤから便りが着いた。  一体何者なのだ、ムナカタの女神とは」 「私のところにも、知らせが再三入っております。  女神は、もちろん、人間ですよ。  それもシルラ人だそうです。    この春、ペクチュの反撃でシルラの後宮が燃え落ち  多くの官女が殺されたそうですが  タンラ(済州島)まで逃げ落ち、  海に身を投げた者も多かった。  どうやらその中の生き残りが  漂着したのではないかと」 「シルラの後宮の女、ということか」 「まあ、そんなところでしょうな」 数年来コリョ(高句麗)の勢力南下が激しさを増す中、 半島南部の覇権(鉄の鉱脈)をめぐって ペクチュ(百済)とシルラ(新羅)とは争いを繰り返していた。 シルラは、どうにか宋と同盟を取りつけたはいいが劣勢で 前線地に兵力を充実した分、都が手薄となり ペクチュに城郭を襲われたということだった。 タケルにとっても、シルラの明暗は他人事ではない。 ペクチュが鉄の産地を抑えたら、鉄の輸入に大きな影響を与える。 にしても…何故女神なのだ、解せない。 「なんでそんな女を、女神としてを祀るのだ  アコヤは、ウズミネが乱心したに違いないと  書いてきているが」 「さあ…女神の意図についてはまだ分かりませんが」 アオは続けた。 「少なくともウズミネは  援軍を出す気は、ないでしょうな。」
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