15人が本棚に入れています
本棚に追加
祓い場の入口には
木彫りの烏が乗った二本の細い柱があって
縄が渡してあったのだが、昨夜の嵐で跡形もなかった。
これは「トリイ」と呼ぶ一種の境界線で
これをくぐって先は男は入れない決まりだったが
トジミミは女を背負ったまま入って行った。
トジミミは生まれつき耳が全く聞こえなかった。
小柄で幼い顔つきをしているが成人した男である。
死んだ母の着ていた古い袷をまとっているので
ますます、大人だか子供だか、男だか女だか、わからない。
最初のコメントを投稿しよう!