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トジミミの母親は
代々「カゼヨミ」と呼ばれる占い師だった。
祓い場で、海の天気や漁の吉凶を占って暮らしを立てていた。
村の女達は、毎朝必ず浜の祓い場に来て、
今日の海について占いを聞く代わりに食べ物を置いてゆく。
占いははずれることは無かった。
空の様子が「凪」であっても、
「カゼヨミ」が荒れると言えば海は荒れるのだ。
母が死んだ後も、
トジミミは小屋に住み続け「カゼヨミ」をしていた。
女にしか受け継がれないはずのカゼヨミの能力が
耳が聞こえないことと引き換えかのように
トジミミには引き継がれていたのだ。
目じりの下がった丸い目は離れ、
口角の上がった口元はいつも微笑しているように見えた。
耳が聞こえず、言葉も話さないトジミミは
一見白痴にみえる。が、実際かなり理知の働く
場合によっては狡猾ともいえる若者だった。
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