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「私も……」
「えっ?」
しかし、驚いた表情を浮かべた角野を目の前に、玲子は慌てた。
「あの、不思議なんです。私、ものすごい人見知りで、引っ込み思案で。
なのに角野さんとは普通にお話できるし、いつもは、あまりよく知らない方との
会話は緊張するのに、角野さんとお話するのは楽しいんです。
だから、あの……」
玲子は、一度切った言葉と共に視線を落とした。
そして、ひとつ呼吸をして、再び視線を上げる。
「私、角野さんを好きかどうかは、まだよく分からないんです。
でも……、でも、もっと気軽にお話したいし、植物のお話も聞かせて欲しいん
です」
一気に言った玲子の目の前で、フワリと角野が微笑んだ。
「僕の話でよければ、いくらでも」
「でも私、恋愛経験は少ないので、ちゃんとお付き合いっていうのは出来るか
どうか……」
「貴女に初めての恋をした時、僕にとって貴女はシロツメクサの妖精でした。
だから、現実として話をして触れることもできなくなった。
でも大人になった今、僕の現実として、貴女が僕と話をしてくれるというの
ですから。僕は、それだけでも十分です」
柔らかく微笑みながら言う彼の言葉に、フッと玲子の肩から力が抜けていく。
そして玲子も、安堵したように微笑み返した。
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