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第2話「空守の里にて」
◇
「ここが空守の里かー!俺の村よりデケェな!」
そもそもそれ程大きな村でもなかったけどな。
里の入口で村の大きさを頭の中で比較しているとすぐ近くを男が通るのを見掛けた。
「あ、丁度いいところに!ちょっと悪い!尋ねたいことあるんだけどいいか?」
「なんだ?」
「5年前に魔王と戦った勇者の仲間がこの里にいるって聞いたんだけど」
「ああ…クンリのことか」
クンリ。それが勇者の仲間の名前らしい。
しかしその名を口にする男は何故か表情を曇らせている。何かあったんだろうか?
「クンリなら、里から続く山道を登った先の家にいる」
「…そのクンリって奴に何かあったのか?」
「会ってみれば分かるさ。何の用かは知らないが騒ぎだけは起こさないでくれよ」
それだけを告げると男は去ってしまった。あの様子だとクンリに何かしらあったのは間違いないだろう。
「…ま、行ってみなきゃ分かんねえよな!」
気合を入れて山登り開始!
そして10分が経った。
「ぬぅおお…!急斜面にも程があんだろうがぁぁ…!!」
最初こそはただの山道だった。
けど進むにつれて斜面が角度を増していって今では地面にへばりつかないと転がり落ちてしまいそうな程に達していた。
こんなの山じゃなくて崖ではなくて!?
誰だよこんな山頂に家建てた奴!正気じゃねえよ!
結局さらに10分掛けて山と言う名の崖を登りきった俺は息絶え絶えになりながらクンリがいると言う家に辿り着いた。
疲れ切って地面に這い蹲ってるけどこれくらいは許してちょ。
「やっと着いたぜ…」
いよいよ家の扉と対峙することに成功する。この向こう側にクンリがいる。
しかし、その前に警戒しなければいけない。こんな急斜面の山に家を建てる程の奴だ。足を踏み入れればトラップが作動して即御陀仏だなんてことになりかねない。
ここは慎重に…。
「グレネード!!」
手榴弾を開けた扉の隙間から滑り込ませる。
ふはは!!このまま木っ端微塵にしてやるぜ!!
距離を取って二次被害に備えるが家の中が爆発しただけで済んだ。既に騒ぎを起こしているような気もするが気にしてはいけない。
「…誰もいない、のか?」
一向に誰も出てこないので痺れを切らした俺は扉へと近寄る。
すると突然扉が吹き飛んで来た。紙一重でしゃがんで回避することが出来たが扉は俺の頭上を通り越して背後で無残にも砕け散った。
そうならんだろ。
「誰ですかこんな時間から花火打ち上げる馬鹿は?死ぬんですか?」
そう言って外に出てきて周囲を見渡したり空を見上げたりして多分花火を探している謎の女性。
花火の発生源外じゃなくて家の中ですよ…。
「って言うか何で全裸!?」
「ん?何ですかアナタ。見ないでください恥ずかしい」
「じゃあちょっとは隠そうね?仁王立ちしてる場合じゃないからね?」
「お風呂だったんです。仕方がないでしょう」
「せめてバスタオル巻くなりさぁ!?」
もう色々と丸見えなんだよなぁ!スタイル良いし可愛いから役得だけど!!
「うるさい人ですね。ん?うるさいと言えばさっきの花火…」
俺へと悪態をつきながら家の中へと戻ろうとした女性。振り返ってそのまま固まってしまった。
「……大惨事じゃないですか!」
「気付いてなかったんかい!!」
まさかの盲点。家の中から爆発音が聞こえるはずがないと思い込んでいた故の見過ごしだろう。
いや普通気付くけど。
「誰がこんな事を…」
「すまん、俺だ」
「そうですか…」
女性は特に怒ることもせず家の中へと入っていく。
そしてその辺の木屑とかした椅子に座ると優雅にティータイムを始めた。
真っ裸で。
「犯人はアナタですね?」
「だからそう言った!!」
そして服を着ろ。目のやり場に困る。
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