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あれ以来親友たちは「陸!」と呼んでくる。最初はふざけて言ってきて照れ臭かったが、だんだん俺も親友たちも慣れてきた。前までは名前を呼ばれても反応できなかったが、今では「おう!」と返せる。今まで下の名前で呼ばれたことがなかったから新鮮で、こんなにも感動するとは思わなかった。名前という身近にあるものを変えると周りの景色が変わる。例えば、空はこんなに青かったのかとか。俺は何も変わっていないのに見るものすべてが新しく見える。春は毎年こういう気持ちになるが、今はその理屈が分かる気がする。この地から見る空は客観的だ。ああ、何気なく付けた「陸」にはそういう意味があったのかと恥ずかしくなって石を蹴る。
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