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一度ため息をつくと母は口を開けた。食卓の上で重ねるようにしていた両手を組み、祈るようにしている。
「そっか…。そう思ってたんだね。あたしは大空っていう名前が好きだし、だからこそそう名前を付けたんだけど、あんたがそうしたいんだったら好きにしたらいいと思うよ。」
「そうだな。…お父さんも大空の名前気に入ってるけど本人が変えたいなら変えたらいいんじゃない?今は簡単に名前変えられるしもしもどしたくなったらまた変えればいいし。」
え…。あっさり。さっきまでの静観な顔つきだったのに…。
「え…改名…して、いいのか?」
「自分で一生懸命考えたんだろ?ならお父さんたちはお前を信じるしかないだろう。」
「ありがとう…。」
誕生日の前々日、俺は学校帰りに市役所で改名届け出の書類をもらって帰ってきた。とは言っても窓口で言えば制度の説明の冊子と役所に提出する紙1枚を大量生産の工場のような滑らかさで渡してくれた。部屋で書類の欄を埋め、提出する。晴れて俺はこれから「今入陸」として生きていく。
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