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自然豊かな国、フレイアは緑の神々に愛されし国である。 爽やかな空気が流れるこの国の人達は、とても穏やかな気質の人が多い。 (かえ)って隣国スルトは灼熱の女神に愛されし国であり、攻撃魔法や魔法具の技術に特化した軍事国家だった。 スルト国の人々は戦いを好む人が多く、それを見たフレイア国の初代国王はスルト国に対し友好条約を要求する。そうしてフレイア国とスルト国は実質の同盟国となったのだ。 その隣国、スルトが攻め込んできたのは建国200年を来年に控え、国中がお祭りムード一色のときだった。 多くの植物たちと共に暮らしてきた人々はあまりにも戦いに不慣れであった。 あっという間に住み慣れた町を、村を追いやられ、多くの人は国の中央に位置する王都へと逃げ込む。 戦おうとした人もいた。 抗おうとした人もいた。 けれども緑の神々に愛されし国の民は、木属性、つまりは植物を操る魔法しか使えない。 灼熱の女神がスルト国の民に与えた火属性の魔法とは明らかに相性が悪かった。 緑の加護は、灼熱の魔法の前では余りにも無力だったのだ。 灼熱の炎に焼かれて、焦土と化す故郷に人々は絶望した。 このままでは、逃げ込んだ王都ですら火の海になることは明白だった。 誰もが明日を無事に迎える事を諦めたその時。 あたり一面で地響きがした。 今度は何だ、と。 苛烈な隣国は何をするのだ、と虚な目をフレイア国の民が国境付近に向けた。 だが、予想外のその光景に多くの人々が驚く。 それは自軍も敵軍も関係なかった。彼らは目を見開きその類稀なる才能を目撃した。 巨大な茨がフレイア国の周りを囲い、スルト国とフレイア国を分断する巨大な壁となる。 人々は最初それは神の導きだと思った。 けれど次の瞬間、炎で荒れた土地の真ん中に一人の少女の姿を見つけた。 彼女の名前はノルン・ヴィーザル。 穏やかなフレイア国の中でも武の象徴を司る、ヴィーザル侯爵家の一人娘。 僅か十四歳ながらに国防の役割を果たす茨を生み出した、類稀なる才能を持つ魔法使い。 後に彼女は史上最強の少女と呼ばれ、数奇な運命に翻弄されることとなる。
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