4人が本棚に入れています
本棚に追加
私のお父さんはなんでも言うことを聞いてくれる。
「ねぇ、お父さん、そこにあるコップをとって」
「うん」
「ねぇ、お父さん、今日の服を選んで」
「わかった」
私のお願いに、お父さんは一切不満を言わずに、なんでもしてくれる。
拒否をされたことは一回もない。
他にも、
「ねぇ、お父さん、私の今日の予定はなんだっけ?」
と聞けば、
「今日は十五時から歯医者の予約が入っているよ」
と私の予定まで把握をしてくれていて、すぐに答えてくれる。
ある日の休日、私はいつものようにお父さんにお願いをした。
「ねぇ、お父さん、一緒にテレビを見よう」
「了解」
お父さんはいつものようにすぐにテレビをつけた。
『………犯人は今も抵抗を続けており……』
テレビからアナウンサーの高い声が流れる。有名なニュース番組だ。
「ねぇ、お父さん、また起きたのね。アパートの立てこもり事件」
「そうだね。この事件の犯人は、過去に親から虐待を受けていた、ヤマダタカヒサさんと見られている。一週間前の立てこもり事件の犯人はコバヤシイチロウさん」
「そんなことまで分かっているのね。すごいね」
それから、私はぼーっとニュースを見ていた。
そして唐突にニュースがコマーシャルに変わった。
「……ねぇ、お父さん、コマーシャルに入っちゃったから、チャンネルを3に替えて」
「……」
なぜかお父さんの反応がなかった。
「ねぇ、お父さん、チャンネル替えて」
「……」
もう一度言ってみるが、やっぱり反応がない。
「ねぇ、お父さん!ねぇ、お父さんってば!!」
私は慌ててお父さんの背後に回った。
そして、チッ……私は舌打ちをした。
お父さんの背後に付いているバッテリー残量の表示が0%になっていた。
コマーシャルがあけた。
『……最近はロボットに依存する若者が多く、問題となっています。ロボットを使い、現実逃避する若者も一定数いるということです……』
最初のコメントを投稿しよう!