ねぇ、お父さん

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 私のお父さんはなんでも言うことを聞いてくれる。 「ねぇ、お父さん、そこにあるコップをとって」 「うん」 「ねぇ、お父さん、今日の服を選んで」 「わかった」  私のお願いに、お父さんは一切不満を言わずに、なんでもしてくれる。  拒否をされたことは一回もない。  他にも、 「ねぇ、お父さん、私の今日の予定はなんだっけ?」 と聞けば、 「今日は十五時から歯医者の予約が入っているよ」 と私の予定まで把握をしてくれていて、すぐに答えてくれる。    ある日の休日、私はいつものようにお父さんにお願いをした。 「ねぇ、お父さん、一緒にテレビを見よう」 「了解」  お父さんはいつものようにすぐにテレビをつけた。 『………犯人は今も抵抗を続けており……』  テレビからアナウンサーの高い声が流れる。有名なニュース番組だ。 「ねぇ、お父さん、また起きたのね。アパートの立てこもり事件」 「そうだね。この事件の犯人は、過去に親から虐待を受けていた、ヤマダタカヒサさんと見られている。一週間前の立てこもり事件の犯人はコバヤシイチロウさん」 「そんなことまで分かっているのね。すごいね」  それから、私はぼーっとニュースを見ていた。  そして唐突にニュースがコマーシャルに変わった。 「……ねぇ、お父さん、コマーシャルに入っちゃったから、チャンネルを3に替えて」 「……」  なぜかお父さんの反応がなかった。 「ねぇ、お父さん、チャンネル替えて」 「……」 もう一度言ってみるが、やっぱり反応がない。 「ねぇ、お父さん!ねぇ、お父さんってば!!」  私は慌ててお父さんの背後に回った。  そして、チッ……私は舌打ちをした。  お父さんの背後に付いているの表示が0%になっていた。 コマーシャルがあけた。 『……最近はロボットに依存する若者が多く、問題となっています。ロボットを使い、現実逃避する若者も一定数いるということです……』  
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