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「この男は誰なんですか? バイト先の先輩ってことはないですか?」
「それはないわ。梨花が働いてるのはファミレスだし、そんな派手な髪じゃ働けないと思うんだけど……」
藍子の言う通り、派手な金髪はファミレスで働くのに相応しくない。面接するまでもなく帰されるだろう。
「最近バイト頑張ってると思ったら、こんな格好しだして……。時々帰りが遅くなるからおかしいと思ってこっそりつけてみたら、この男にお金渡してキスしてたの。それと、何か貰ってて……」
話しているうちに藍子は徐々に俯いてしまう。
危険ドラッグのバイヤーかもしれない。
ここまで話を聞いて、千夏はそう思った。きっと藍子も同じことを考えているのだろう。
「梨花ちゃんは、男から何を貰ったんですか?」
「分からない……。いくら問い詰めても見せてくれないし、カバンの中を見ても怪しいものは入ってなくて……。麻薬かもって思って警察に行ったんだけど、証拠がないからって相手にしてもらえなかったわ……」
藍子はため息をつくと、アイス珈琲をひと口飲んで口を湿らせる。
「やっぱり、この写真じゃ動いてくれないですよね……」
「えぇ……、動画を撮ったつもりだったけど、写真だったの……」
そう言って藍子はスマホに視線を落とす。何の事情も知らない人がこの写真を見たところで、少女が悪い男に騙されているとしか思わないだろう。不良男に入れこんた少女を助けるほど、警察もそこまでお人好しではない。
「あの、私の仕事は……」
「弁護士の仕事じゃないのは百も承知よ。でも、他に頼れる人がいないの……」
藍子は千夏の言葉を遮り、彼女の手を握りながら必死に訴える。お人好しの千夏がこんな叔母を放っておけるわけもなく、気がつけば首を縦に振っていた。
「分かりました、私が何とかします」
「ありがとう……! お礼は絶対にするから」
「そんな、お礼なんていいですよ。それより、知ってる限りのことを話してください」
今にも泣きそうな藍子の肩をさすって落ち着かせると、彼女から話を聞いた。
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