18人が本棚に入れています
本棚に追加
藍子から相談を受けてから数日後の夕方。藍子から聞いた話を元に、梨花のバイト先であるファミレスから少し離れたところにあるコンビニで、立ち読みするふりをしながら窓の外を見る。藍子の話によれば、梨花は夕方にバイトが終わるとその足で路地裏に行くらしい。
(そろそろね……)
腕時計と外を交互に見ながら待っていると、梨花が目の前を通り過ぎる。
写真のようにギャルのような格好をし、浮かれ気味に歩く梨花は恋する乙女そのものだ。それを見た千夏は危険ドラッグではなく、クズ男に騙されているのではないかと考え直す。
梨花が完全にコンビニを通り過ぎてから、千夏は外に出て彼女を尾行する。浮かれている梨花は千夏の素人尾行に気づくことなく、路地裏に入った。
「いよいよね……」
千夏は小声で呟き、気合を入れるように短く息を吐くと、スマホで動画を撮りながら路地裏を覗いた。写真で見た男が梨花から数千円受け取ると、小さな何かを渡した。それが何かは分からないが、ふたりの手の間で一瞬だけ光る。
男は梨花を抱き寄せ、梨花は男の首に腕を回してキスをする。それも軽く触れるようなものではなく、ねっとりとしたディープキス。くちゅくちゅと水音が聞こえ、時折梨花の甘い吐息が零れる。
(高校生相手になんてことを……!)
怒りに身を任せ、千夏はふたりの前に出て男を睨みつける。
「何をしてるの!」
「んん?」
「チナ姉!?」
千夏が怒鳴ると男は面倒くさそうに、梨花は目を見開き彼女を見る。
「梨花ちゃん、その男から貰ったものを渡しなさい!」
「でも……」
「いいから!」
千夏が声を荒らげると、梨花は震えながら先程貰ったものを渡した。細長い何かを包んだ銀紙は、先に疑っていたせいか、どうしても危険ドラッグに見えてしまう。
「薬物かどうか検査します、ついてきなさい」
「え……」
千夏の言葉に梨花は愕然とするが、男はニヤニヤ笑っている。
「おねーさん警察?」
「いいえ、弁護士です」
「弁護士に捜査権利や逮捕権利なんてあったっけ? ま、やましいことはないからいいけどね。ここじゃなんだし、場所変えよっか」
そう言って男はふたりの手を引く。
最初のコメントを投稿しよう!