始業式

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「君島くんが『お姫様』って呼んだのが、園川先輩に匹敵するほどのかわいさの子っていうのも問題だし、その相手が双子っていうのも、義理の兄弟っていうのも問題なの。分かる?」 「はあ...いや、分かんない」 「どっからどう見ても禁断の恋じゃん!」 いや、どっからどう見ても違うでしょ。 落ち着いて考えてください。 興奮しすぎで、脳が正常に動いてないんじゃないですか? 「双子の義理の兄弟が恋人ってあり得なくない?」 「人気者を次々と落としていく君島くんなら、あり得るっていうのが僕らの意見」 「え」 それは、褒められているのか、貶されているのか。 どっちなんでしょう。 しかも、僕らって誰? 「とにかく、あの2人は君島くんの弟っていうのは事実なんだね?」 「はい。事実でございます」 「恋人ってわけじゃないんだよね?」 「はい。違います」 それは、断じて違います。 分かった。隊員にはちゃんとそのことを通達しとくから、と言うクラスメイトくん。 とてもありがたい。 できる男だ。クラスメイトくんは。 「生徒会の人たちへの説明はどうしようかな。文章での通達じゃ納得してくれない気がするんだけど」 「それなら放課後に説明しに行くから、大丈夫だと思う」 「あ、そう。分かった。じゃ、そっちはお願い」 「うん」 本当に、頼りになる隊長で良かったと思います。 俺にはよく合っている気がしますよ。 敬意はないけど、その分容赦がなくて、間違ってることはちゃんと指摘してくれるので助かっています。 他の隊だったりすると間違ったことも指摘しないで、寧ろ盛り上げちゃうようなところもありますからね。 「じゃ、ちゃんと説明してきてね?」と念押しを忘れずに、クラスメイトくんは席を立ちます。 「はいはーい。ありがとね」と手を振ると、クラスメイトくんも手を振りながら出ていきます。 すると、入り口付近で立ち止まるクラスメイトくん。 誰かと話しているのかな。 手を振るのをやめてそれを眺めていると、話し終わったのか、クラスメイトくんはそのまま教室を出ていきました。 それと入れ替わるようにして入ってきたのは、エースくんを先頭に、さっきまで食堂で一緒にいた顔ぶれ。 俺と目が合うと、歩み寄ってくるエースくん。 「近藤と話したか?」 エースくんは、ちゃんと『近藤』呼び。 呼び捨てなのは、去年一緒のクラスだったからです。 何回か、一緒に話しているところを見たことがありますし、仲はそこそこ良いと思われます。 「うん。さっきの食堂のことでちょっとね。なんか言われたの?」 「ああ。ちゃんと見張っとけって言われた」 「あはは」 なるほど。クラスメイトくんは、エースくんを俺の見張り要員として考えているみたいですね。 まあ、現状そんな感じですけど。 「あいつらは?どうだった?」 「お前のことめちゃくちゃ聞いてくるから、適当に答えといた」 「そっか。ありがとう」 自分が勝手に逃げておいて、あの2人を食堂に残してきたことが心配になります。 なにか壊したり、騒いだりしなかったでしょうか。 「迷惑とかかけなかった?大丈夫だった?」 「騎士くん、心配しすぎ。大丈夫だったよ」 「ん。大丈夫」 エースくんは大丈夫そう。 他の2人にも聞いてみると、大丈夫だった、とのこと。 「そう。良かった」 そりゃあ、心配にもなりますよ。 だってあの2人は歩くトラブルメーカですから。 10秒だって静かにしていられないんです。 中学時代も、何度トラブルを引き起こしたか分かりません。 でも、それも今までの話。 高校生になって、2人も大人になったはず。 高校では静かに、問題を起こさずにいて欲しいんですけど。 ...無理だろうな。 そして、俺はその後始末に駆り出されるのでしょう。 中学までの日常が戻ってきたって感じですね。 今のうちに、風紀の人たちに「よろしくお願いします」って言いに行こうかな。 いや、先に謝っておく方が良いかもしれません。
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