始業式

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「遅いよ、奏夜。っていうか、...なんで雅がいるの」 じとっとした目を俺の腕の中に向ける園川先輩。 そこにはぐったりとした園田先輩が。 結局、後半は俺が抱えて走りました。 だって、校舎が広過ぎるせいで時間がかかっちゃいますから。 「双子の話をするのに、風紀の方もいた方が、一度に済んで楽かと思いまして」 よいしょっとソファにおろすと、ううう、と呻く園田先輩。 「奏夜くん、足速すぎ。ジェットコースター乗ってる気分だった」 「すみません。急いでたもんで」 グロッキーな園田先輩を見てると、申し訳なくなってきました。 でも、後悔はしてません。 園川先輩を見た感じ、あと少し遅かったら鬼電確実っていう雰囲気でしたもん。 「なんで、風紀がいたほうがいいのですか?」 と、紅茶を目の前に置きながら、問いかけてくる副会長さん。 相変わらずのクールビューティーさと言いますか。 中身はちょっと残念ですけど、綺麗な人ですね。 お茶のお礼を言い、いただきますと紅茶を一口。おいしい。 「あの2人、すごいいたずらっ子なんですよね。ご迷惑をおかけすると思うんですよ。なので、先に説明しておいておいたほうが良いかな、と」 まあ、思いついたのは、ついさっきの話ですけど。 「それで?説明してくれるんでしょ?」と園川先輩が俺の腕を引き、園田先輩の向かいのソファに座らせられます。 すると、空いていたところに続々と座り始める生徒会メンバーの皆様。 そして俺に集まる視線。 そんなにあの双子のこと、気になりますか? でも、説明って言ってもねえ。 「あいつらは義理の兄弟です」 としか言いようがありません。 説明が終わってしまいました。さあ帰ろう。 ...とはなりませんよね。知ってた。 「お互い連れ子ってこと?」 「はい。俺は母親の連れ子で、向こうが父親の連れ子です」 容姿が真逆と言っていいほど違うので、今までもいろいろ言われましたね。懐かしい。 今となっては、それも良い思い出です。 「奏夜の実のお父さんは?」 「幼い頃に病気で。でも、それが不幸だと思ったことはありませんよ」 にこっと笑ってみせると、しんと静まり返る生徒会室。 そんな、気にするようなことでもないと思うんですけどね。 「でも、向こうは離婚なんです」 「え?」 「あいつらのいたずらは、かまって欲しいっていうサインなんです。だから、なるべくなら付き合ってやりたくて。ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」 このお願いは、ここにいるメンバーに、何のメリットもありません。 何を都合のいいことを言っているんだ、とバッサリ切り捨てられてもおかしくないんです。 それを分かった上で、頭を下げます。 「...羨ましいね」 「え?」 思いがけない言葉に思わず顔を上げると、園川先輩と目が合います。 少し寂しそうな、複雑そうな表情。 「確かに。奏夜くんに、そんなに思ってもらえる弟くんたちが羨ましいよ」 「そうですね。それにすごく優しいですし」 「本当、良いお兄ちゃんだね」 「もし、自分にこんな優しいお兄ちゃんがいたら、お兄ちゃん子になってると思います」 「は?そんなことあり得ないから」 会計さん、副会長さん、天光くんに続いて園田先輩が言った言葉に対し、瞬時に噛みつく園川先輩。 はぁ...と園田先輩が大きくため息をつきます。 そのわざとらしいため息に、園川先輩がピクッと反応しました。 え、ちょっと嫌な予感がします。 「『もし』と言ったでしょう、『もし』と。あくまで仮定の話です」 「そんなこと分かってる。でも、仮定の話でもあり得ないって言ってんの」 「話が通じませんね。ちゃんと脳みそ詰まってますか?」 「は?馬鹿にしてんの?喧嘩なら買うけど?」 お互いの身体から、ブリザードが発生しています。寒い寒い。 変なところで似てるんだよなぁこの2人。 血筋なんでしょうか。 あと、この2人、割と質が悪いですよ。 単品なら、落ち着いているんですが、セットにした途端、喧嘩せずにはいられないみたいです。 しかも、2人とも強いですからね。 園田先輩は武道を習ってたらしいですし、園川先輩は物理的に力が強いです。 以前は、園田先輩が園川先輩を抑え込んでの勝利でしたが、今回はどうなるんでしょうか。 なんて、遊んでる場合じゃないですね。 はやく止めないと。 生徒会室が氷漬けになっちゃう。
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