始業式

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『続いて、生徒会からです』 始業式が始まり、先生たちのありがたいお話の後、壇上に立ち話し始めたのは、次期生徒会長の天光(あまみつ)くん。 「相変わらずの王子様っぷりだな」 「ははは。確かに」 すらりとした体型に、色素が薄い髪と瞳。 そして何より整った顔立ち。 おとぎ話の王子様のようです。 中身もね、一年の時はずっと成績も一位でしたし、『完璧王子』なんて裏で言われていたりするそうですよ? 実際は、ただのへたれわんこですが。 天光くんとは去年同じクラスで、最初の席が隣だったんです。 それがきっかけで、それなりに仲良くしていた。と思います。 休み時間とか、エースくんと天光くんと3人でいることが多かったですかね。 「あいつ、誰か探してねえか?」 「え?」 エースくんの言葉に、天光くんのことをよく注意して見ると、目が何かを探しているように動いていました。 その間、王子様スマイルで詰まることなく話し続けています。 言われなければ気付かなかったでしょう。 変なところでハイスペック発揮してるなあ。 なんてぼーっと眺めていると、ふと天光くんと目が合いました。 すると、ふわりと微笑む天光くん。 それまでの王子様スマイルとは違う、思わず零れたような笑みに、周りが沸き立ちます。 『以上です』 本人はそのことを気にする様子もなく、話を終え退場していきました。 あ、やば。全然話聞いてなかったわ。 始業式が終わり、教室に戻っている途中、エースくんが話しかけてきました。 周りは、さっきの天光くんの笑顔の話で盛り上がっています。 「なんで急に笑ったりしたんだろうな」 「さあ。なんでだろうね」 「あの子、そーやのこと、みてたよ?」 「「え?」」 少し下の位置から聞こえる声に、思わず聞き返してしまいます。 「それ、本当か?」 子犬さんの言葉を聞いたエースくんが、問いかけてきます。 「あー、目は合ったかも」 でも、 「まあ、気のせい「じゃねえだろ」...そうだね」 エースくんに遮られてしまいました。 気のせいであって欲しかったなあ。 ファンの皆さんに制裁されたりしないでしょうか。 もしされるなら、もっと早くに、それこそ一年の頃にされてるか。 教室に戻り、担任から少し説明を聞き、あっという間に解散です。 元々今日は、半日でしたからね。 早く帰ろうと荷物をまとめていると、 「やっほー。ハヤ、部活行こー」 と茶髪の背の高めの男子がエースくんに絡んできます。 あ、エースくんの本名は「小林隼人(こばやしはやと)」です。 で、この茶髪くんはエースくんと同じバスケ部の人なんですけど、 「あれ、君、どこから湧いて出た?」 「ひどいなあ。騎士くん。同じクラスじゃん」 「え、そうなの?」 それは申し訳ない。 名簿を見て「君島奏夜」の後が「小林隼人」だったので、他はあまり確認していなかったんです。 エースくんがいるなら、新しい友達作らなくてもいいかなって。 俺、友達は狭く深く派なんで。 広く浅くっていうのは、俺には難しいかも。 正直、この人もエースくんの友達じゃなきゃ仲良くしたりしないだろうな、って思います。 っていうか、そもそも俺、この人の名前も知らない。 自己紹介もされたことないし、したこともありません。 茶髪くんに「なんで俺の名前知ってたの?」と聞くと、 「だって騎士くん、有名人じゃん」と返ってきました。 なるほどなるほど。 俺が有名人だから、自己紹介なんてしなくても、向こうは俺の名前を知ってたわけね?俺は目立ちたくないのに。 だから自己紹介の必要はなかったと。 ...俺が茶髪くんと同じクラスだって知らなかったの、俺だけのせいじゃないんじゃない? それに、普通は新学年になったら、初日に自己紹介とかするもんじゃないのかな。 まあ別に、したくなかったから良いけど。
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