始業式

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「はい。どうぞ」 「いただきまーす」 テーブルの上に置いたチャーハンを、口いっぱいに頬張る園川先輩。 「仕事は、忙しいんですか?」 コップに水を注ぎながら問いかけると、ごっくんと飲み込み、話し始めます。 「うーん。まあ、そうだね。当分は忙しいかな」 「やっぱり、入学式があるからですか?」 「うん。それに、新入生歓迎会とか引き継ぎとかもあるからねー引退するまではずっと忙しいんじゃないかな」 僕は奏夜と一緒にいたいのに、とぷくっと頬を膨らませる園川先輩がかわいいです。 「新入生歓迎会って、何するんですか?」 去年は鬼ごっこでしたね。 まあ、発作を起こした園川先輩に付き添ってて、参加はしませんでしたけど。 それに元々、足を捻挫していて走れないので、生徒会の補佐をするつもりでしたし。 「んー本当は秘密なんだけど、球技大会の予定」 「球技大会ですか?」 「うん。クラスごとにチーム組んで、戦うの。クラスの中が深まりそうでしょ?」 なるほど。 まあ、鬼ごっこよりはクラスの人たちと仲良くなれそうな気はします。 「多分、明日チーム分けとかすると思う」 「生徒会のメンバーも参加するんですか?」 「うん。するよー。種目もね、バスケとかサッカーとか、いろいろあるし」 「へー」 一番楽そうなのにしよう。 チャーハンをぺろりと完食し、園川先輩は仕事をしに戻っていきました。 俺も食事と洗い物を手早く済ませます。 それにしても、暇だなあ。 俺は部活に入っていないので、とても暇です。 あ、そうだ。 届いた荷物の整理をしましょう。 昨日、実家から荷物が届いたんです。 つい先日ケータイを解約したため今どこにいるか分からない母からは、不気味な人形と対になったブレスレットが。 一歳年下の弟からは、それぞれ大きな段ボール一箱分の大量の服と、BLの漫画・本が。 不気味な人形(送ってきた母曰く、『どこかの国の、なんとかっていう民族の、なんちゃらかんちゃらっていう、厄除けの効果があるらしい人形』)は段ボールのまま封印することにしました。 いや、始めは厄除けの効果があるっていうのでいろんな所に置いてみたんですが、夜中、トイレに起きた不良先輩が人形を見て叫んだので回収しました。 毎日、夜中にあんな声で起こされたら困ります。 まずは、届いた服をクローゼットに。 入りきらないかなと思っていたんですが、元々持っていた服が少なかったというのもあり、無事入りました。 こりゃあ、私服の心配もされるわ。 今回の大量の服も、弟が俺の私服事情を心配して送ってきたものなんですよね。 だって、部屋から出ないんですし、適当でもいいと思いませんか? そして最後は大量の漫画と本たち。 本棚には余裕がありますが、これらを並べようとは思いません。 だって、男子高校の寮室に、こんなあからさまなBL本たちを並べようという気は起きないと言いますか。 同室の先輩たちは、どんな経緯で俺がこの本たちを所持しているのか知っているので気にしていない、というか寧ろ興味津々ですけどね。 こいつらも、段ボールに入れたまま封印かな。 と段ボールの蓋を閉じようとして、あ、でも読んでおかないと感想聞かれたときに困るな、ということに気付いてしまいました。 恐らくですが、弟がうちの高校に入学してくるんですよ。 俺もつい昨日知ったんですけどねあはは。 正直、面倒なので関わりたくないんですが、向こうがそれを許してはくれないでしょう。 で、次に会ったとき、感想を聞かれると思うんです。 荷物が届く前に、「届いたら感想聞かせてね」と言われていたんですが、まだ段ボールから出してもいないのでね。 多分、弟は今すぐにでも感想を聞きたいでしょう。 昨日からひっきりなしに連絡が来ているんですが、着信拒否&未読無視中です。 だって、あまりにもしつこいんです。 とりあえず、何冊か目を通しておくか。 どうせ時間は有り余っているんです。 段ボールの中から適当に何冊か掴み、ベッドへと向かいます。
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