始業式

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「あーこっちこっち」 声が聞こえ目を向けると、4人テーブルに座り、手を振っている茶髪くんがいました。 「ありがとう。はい、これカレーライス」 「どういたしましてー。騎士くんも俺の分ありがと」 茶髪くんと俺の分のお盆を、テーブルの上に置きます。 「あれ、他の2人は?」 「結構人が並んでてさ。もう少しで来ると思うけど」 「へー。ん、騎士くん座らないの?」 「うん。俺が立ってれば、目印になるでしょ?」 あーなるほどね、と納得していた茶髪くんが、あ!と何かを思い出しました。 え、なんか嫌な予感がする。 「人がたくさんいる理由、分かったよ」 「へー、なに?生徒会メンバーがいるの?」 「まあ、それもあるんだけど、噂の双子ちゃんがいるみたい」 「あーなるほど」 生徒会目当ての人と、双子目当ての人が集まった結果がこれってことですか。 「あっちの塊が生徒会。こっちの塊が双子ちゃん。」 「ふーん。ん?なんか近付いてない?」 「え?...ほんとだ」 2つの塊がだんだん近付いています。 茶髪くんが同意してくれたので、俺の気のせいってわけじゃないみたいです。 ...1つになったら大爆発でも起きるんじゃないでしょうか。 爆発する前に、できれば避難したいんですが、手つかずの料理をそのままにするなんてできません。 そういえば、 「去年もこんなことあったような」 「え?そうなの?」 あ、心の声が出てしまいました。 「去年、天光くんとご飯食べてたら、会長さんと副会長さんが天光くんのことを、生徒会に勧誘しに来たんだよね」 「あーそっか。その時、騎士くん一緒にいたんだね」 「そうそう。懐かしいな」 あの時、俺の平穏な生活は完全に崩れました。 もう諦めましたけどねあはは。 「あー。じゃあ、今回も同じかも」 「え?生徒会の勧誘ってこと?」 「多分。双子ちゃん、両方とも成績優秀みたいだから」 そんな情報、どこから手に入れてくるんでしょう。 驚く以上に呆れていると、茶髪くんがてへっとふざけます。 なんかムカつく。 すると、1つになった人ごみの中から、なにやら揉めているような声が聞こえてきました。 「うわー。なんかよく分かんないけど揉めてるねー」 「めんどくさ」 騎士くん心の声出てるよー、とからかう茶髪くん。 もう隠してないからいいかなって。 「騎士くんってさ、割とドライだよね」 「あー、そう?」 「うん。なんか勝手に、優しくて流されやすい人だと思ってた」 実際に話してみたら全然違ったー、と茶髪くんが笑いますが、さりげなくディスられてます? 「情報通なのに、俺のこと知らなかったんだ」 「まあね。騎士くんは謎のベールに包まれてるから」 「包まれた覚えないんだけど」 「あはは、おもしろい返し方」 最近知ったけど、茶髪くんって笑いのツボ浅いよね。 「それは冗談で、ただ単に、騎士くんに関する情報が少ないから」 同じようなことを、他の人にも言われたことがあります。 俺ってそんなに情報少ない? 意図的に隠したりしたことなんて、ないんですけどね。 「あ、2人来たー。おーい」 「え?本当だ」 もう少し聞きたかったんですが、エースくんと子犬さんが来たので話は終了。 いろんな点で正反対の2人が並んでいる姿は、どこかおかしくて、なんだか和みますね。 思わす微笑んで手を振ると、子犬さんが嬉しそうにお盆を片手に持ち替え、手を振り返そうとします。 が、上手くバランスが取れず、お盆がふらついたところをエースくんがさっと支えました。 エースくんは子犬さんへの接し方が分からない、なんて言ってましたが、心配ないように見えます。 あと、ざわめきが近付いてきているような気がします。 生徒会のメンバーが、こちらに向かってきているのでしょうか。 本来なら、一介の一般生徒に生徒会が近付いてくるなんておかしな話なんですが、もう慣れました。 慣れたくなんてなかったなー
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