1の宇宙

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1の宇宙

1つ目の宇宙。僕が彼に出会ったのは6歳の頃だった。彼の宇宙を僕は10歳くらいまで知らなかった。その宇宙はサッカーだった。彼の持つものはそれはそれは宇宙だった。果てしなかった。暗闇だった。一体何をしたらこれが作り上がるのか、分からなかった。彼は寡黙だった。努力は人には見せびらかさなかった。学校でのおどけ姿はサッカーの前には消える。至って何も喋らなくなる。その毅然性に心底震え上がったのを覚えている。幾ら彼と違う道を歩もうが思い出す度に引っ張り込まれそうな闇に今でも心惹かれるところはある。怖いもの見たさであろうか。彼と話したこと自体多くは無いが、深く知ることをはばかられる鼓動と業火がそこにはあった。ただその熱に侵されることの無いように干渉を恐れた。彼は海外にいった。僕の知らないところでまた宇宙が広がり続けている。
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