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にししと白い歯を見せながら嬉しそうに笑っている星野さんと塩対応ながらもなんだかんだで心を許している様子の彼の姿が嫌でも視界に入ってくる。他の体育祭実行委員の人達も、突然やってきて、いきなり結城くんに話をふりはじめた星野さんの存在が気になりつつも凝視するのは悪いと感じているらしい。
二人は教室でよく見かける光景と同じように、しばらくの間なんでもないことを話していた。
「そろそろ練習戻らなきゃ。じゃーね。体育祭実行委員会、頑張って!」
星野さんは、溌剌とした笑顔で手を振りながら体育館内に戻っていった。
間違えた、気を取られている場合じゃない。勝手に沈みがちになっていた心を持ちなおすように、渡されたプログラムを確認する。ええと、最初の担当はプログラム三番の大縄跳び……縄の保管場所はここか。
目的物に手を伸ばそうとしたその時、いつの間にか隣に立っていた結城くんが先に手を伸ばしてきてびっくりした。反射で手をひっこめたら、彼はわたしに視線を向けた後いつになく歯切れ悪そうな様子で言った。
「あの……。三枝さんに、ずっと確認したいことがあったんだ。この前の――「部活着姿の星野さん、すごくかわいかったですね!」」
「は?」
自分でも、どうして彼の言葉を遮ってまでそんなことを言ってしまったのか分からなかった。結城くんは切れ長の瞳をカッと見開いて、唇を半開きにしたまま呆然と固まっている。
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