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「さゆちゃん……」
「詩葉、死んだ魚みたいな目してる」
「もう、ダメかもしれない」
「ぜんぜん話が読めないんだけど」
今日は夏休み三日目。
例年通りの夏休みだったらるんるんでお気に入りの少女漫画を徹夜で読み返したり、執筆に精を入れながらうきうきと楽しく過ごしているところなのに、今年の一日目と二日目は食事以外のほとんどの時間カーテンを閉め切った薄暗い部屋に引きこもっていた。
引きこもり自体は異常事態ではなくむしろ通常運転なのだけど、問題は心だ。執筆に集中できないかと思えば、漫画を読むことすらもままならないぐらいに酷かった。何をしていても虚しくなってきて、最終的には屍のように布団に倒れ込んでしまった。
このままでは家族に心配をかけてしまうと思ったので、昨夜、外に出ることを慌てて決意した。例のごとくさゆちゃんに泣きつき、今日はゲーム以外の予定は特にないらしかったのでいつものファミレスに来てもらった。情けない限りだ。
「……ぜんっぜん執筆に集中できなくて」
「前に会った時も、そう言っていたね」
流石のさゆちゃんも、わたしの発しているあまりの陰気臭いオーラにドン引きしているのか携帯ゲーム機を取り出す気にもなれないらしい。澄んだ黒い瞳を心配そうにわたしに向けている。
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