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店員さんから運ばれてきたオレンジジュースをストローで飲む。いつも美味しいと感じるはずなのに、今日ばかりは水っぽくて味気がないように思えた。
「……今書いている作品はね、ヒーローのモデルが結城くんなんだよ」
「うん」
「思い出したくないのに……書いていたら、いやでも思い出すし考えちゃう」
「どうして思い出したくないの?」
「星野さんと結城くんのことが頭の中をぐるぐると回って辛いんだ。もうやめたいのに、ずっとそのことばっかり考えちゃうの」
「星野さん?」
そういえば、さゆちゃんに星野さんの話をしたことはなかったっけ。
「うん。同じクラスのすごく可愛い女の子で、結城くんのことが好きだから体育祭で告白するんだって。二人は一年生の時から同じクラスで、仲良さそうで、周りから見てもすごくすごくお似合いで、だから……たぶん、付き合うんだと思う」
ぼんやりとうつろな瞳で感想を述べていたら、さゆちゃんの眉間にしわが刻まれた。
「それで。詩葉はどうするの」
「どうって、なにもしないけど」
「どうしてよ。だって、結城くんのことを本気で好きになったんじゃないの?」
「……そう、だよ」
流石に認めざるをえなかった。
現実は甘くないって、痛いほど分かっていたはずなのに。
「星野さんと同じように、詩葉も告白しようとは思わないの?」
「っ。そんなの無理に決まってるじゃん!」
思っていたよりも大きな声が飛び出たせいで、周囲の席の人々に不審な瞳で見られてしまった。
でも、カッと頭に血が昇って、小さく叫ばずにはいられなかった。
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