十章 決意

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 店員さんから運ばれてきたオレンジジュースをストローで飲む。いつも美味しいと感じるはずなのに、今日ばかりは水っぽくて味気がないように思えた。 「……今書いている作品はね、ヒーローのモデルが結城くんなんだよ」 「うん」 「思い出したくないのに……書いていたら、いやでも思い出すし考えちゃう」 「どうして思い出したくないの?」 「星野さんと結城くんのことが頭の中をぐるぐると回って辛いんだ。もうやめたいのに、ずっとそのことばっかり考えちゃうの」 「星野さん?」  そういえば、さゆちゃんに星野さんの話をしたことはなかったっけ。 「うん。同じクラスのすごく可愛い女の子で、結城くんのことが好きだから体育祭で告白するんだって。二人は一年生の時から同じクラスで、仲良さそうで、周りから見てもすごくすごくお似合いで、だから……たぶん、付き合うんだと思う」  ぼんやりとうつろな瞳で感想を述べていたら、さゆちゃんの眉間にしわが刻まれた。 「それで。詩葉はどうするの」 「どうって、なにもしないけど」 「どうしてよ。だって、結城くんのことを本気で好きになったんじゃないの?」 「……そう、だよ」  流石に認めざるをえなかった。  現実は甘くないって、痛いほど分かっていたはずなのに。 「星野さんと同じように、詩葉も告白しようとは思わないの?」 「っ。そんなの無理に決まってるじゃん!」  思っていたよりも大きな声が飛び出たせいで、周囲の席の人々に不審な瞳で見られてしまった。  でも、カッと頭に血が昇って、小さく叫ばずにはいられなかった。
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