十章 決意

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 気怠い身体を引き起こし、ひとまずカーテンを開いた。携帯をいじりながら、昨夜にアップロードしたラストシーンに誤字脱字がなかったかを再度チェックし始めたら、早速、掲示板に新たなコメントが入っていて驚いた。 『初めまして。あたしは学園の王子様の偽の恋人を一気読みしました、面白かったです。恋愛は虚しいばかりだと思っていたけれど、柄にもなく、こんな恋が現実にあったら良いのにと思っていました』  こんな恋が現実にあったら良いのにという一文を目にした時、わたしの本心を見抜かれたような気分になって、胸がぎゅうっと締めつけられた。   『お読みくださりありがとうございました、とてもとても嬉しいです。作者のわたしも、現実でこんな恋をしてみたいなぁと思っています。ううん、違う……実は、恋はしているんですけど。でも、現実のわたしはあまりにもその人に見合わなくて、こんな気持ちを抱いてしまったこと自体が恥ずかしくて、苦しいです』  って、折角作品をお読みいただいた上にあたたかいお言葉までいただいた読者様に向かって、わたしは何を鬱々と愚痴っているのか……。返信した後になって、暗い内容の返信をしてしまったことを早速後悔し始める。物語に対する感想を書いてみただけなのに、作者からの返信でいきなりこんな重たい打ち明け話をされても困るよね。  やっぱり消してしまおう、と指を動かしたその時、わたしの返信に対してまた新たなレスが入っていて目を(みは)った。   『自分には作者さんが羨ましいですけどね。想像力豊かで、物語を紡ぐことができるのは、立派な才能だと思います』  涙が、はらりと頬を伝っていた。
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