十章 決意

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 ずっと、現実でそんな風に言ってくれる人が現れるだなんて、思いもしていなかった。  少女漫画みたいな甘い恋愛小説を書くのが好き。中学二年生の時に書き始めてから夢中になって続けてきた趣味だ、もうすぐ三年目になる。今となっては執筆をなしにわたしという人間は語れない、そう断言できるぐらいに大きな存在となっている。  そんなに大切な趣味なのに、わたしはずっと、執筆が好きな自分へ後ろめたさのようなものも同時に感じてきた。  常にそんな妄想してんの? キモすぎ、と蔑まれるんじゃないかって。  作家気取りとかウケるんですけど! うっわ、どんだけ夢見てんの(笑)、だとか。  だからずっと、帰宅部で、バイトもしていなくて、『家に帰って何してんの?』って他人(ヒト)に聞かれるのが恐ろしくて、ずっと、自分になんの自信も持てなかった。  わたしも、みんなと同じように、今をときめく俳優女優や流行りの格好良い音楽に夢中になれたら、もっと堂々と振る舞えるんじゃないかと考えたこともあった。でも、なにか別の目的があって夢中になりたいと思っている時点で、ぜんぜんそのものに夢中になれていないと思い知らされるばかりで。  結局、わたしの心を何よりも熱くさせるものは、誰にも話せないままでいる執筆だけだった。
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