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だから、高校一年生の時に、初めて執筆のことを打ち明けられる友達ができたのはわたしにとっては奇跡だった。
入学したての頃のさゆちゃんは近寄りがたい雰囲気の氷雪系美少女で、クラスのどこの輪にも混じらず一心不乱にスマートフォンに視線を落としていた。今にして思えば、何かのゲームをやっていたのだと思うけど。彼女とは体育の長距離走の授業の際に一緒にヘロヘロになって最後尾を走っていた時からの仲だけど、さゆちゃんみたいな親友ができたことはわたしの誇りだ。
そう。
誰にも媚びず、堂々としていて、自分の好きなことに誇りを持っているさゆちゃんはわたしの憧れだった。
三週間前に、彼女から本気で叱られたあの日のことを、今でも毎日のように思い出している。
思い返していたら、急にさゆちゃんともう一度話をしたくなってきた。
ベッドの上で正座をしながら深呼吸をする。胸がドキドキしてきた。さゆちゃんに電話をかけるのは、あの時以来だ。もう愛想を尽かされていて、もしかすると電話に出てくれないかもしれない。それでも、あの日にさゆちゃんがぶつけてくれた誠意に真正面から向き合いたいと思った。
「……もしもし」
「詩葉?」
いつも通りさゆちゃんがすぐに電話に出てくれた時、緊張で強張っていた身体がすっと楽になった。
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