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僧侶殺しは残酷だ
「だっ、誰です!?」
「え?ああ、えと」
「そのナイフ、もしかして!」
その僧侶は俺のことなど気にも止めず、仲間の元に駆け寄った。
「返事をしてください!お願いです!」
そんなことを言ってもこいつらはただの肉の塊だ。返事をするはずもない。例えるならば、母豚が殺され、メンチカツにされた後に子豚がそのメンチカツに声をかけているようなものだ。なんと...滑稽なのだろう。人間はこれが面白い。
「ギャーーッハッハッハッハッハーーー!面白れーー!」
俺の本当の性格が出てきてしまった。出来るだけ隠そうとしてきたが、元々あるこの性格は消すことが出来ない。大声を出してしまった。
「私を...殺して...ください」
「はっはっは、え?」
窓から溢れる月の光を受けた彼女の目はとてもきれいで、幻想的で...美味しそうだった。
「喜んでーー!」
望み通り殺してやった。ザクッと肉と骨を削る音が聞こえる。僧侶はバタッと後ろに倒れた。そのとき、ドアの外から足音が聞こえてきた。一人じゃない。二人だ。いやもっとだ。さっきの笑い声で駆けつけたんだ。偽りの性格に戻った俺は、勇者、戦士、魔法使いの肉の塊を持って窓からとんだ。僧侶の肉をとっている暇はなかった。
そのまま草原を走り続けた。必死に。何かから逃げるように。走り続けてようやく落ち着いた俺は、火をおこし、肉を焼いて食べることにした。
「...いただきます」
とても旨い。なんて旨さだ。だがなにかが不足している。調味料でないことは確かだ。肉を噛む度に、僧侶のあの目を思い出す。なんて美しい目だったんだろう。それが俺の心に深く刺さってきて、良く味わえない。
「...ごちそうさまでした」
腹がいっぱいになると眠くなる。深夜だったということもあり、俺はすぐに寝付いた。
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