魔王になるのは残酷だ

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魔王になるのは残酷だ

起きるとそこは牢屋だった。冗談じゃない。俺が寝てる間に運ばれたっていうのか? 「出ろ」 兵士っぽい鎧を着たそいつは、牢屋の鍵を開けた。俺が出ると、他にもいた兵士に手や、胴体をロープで巻かれた。寝起きだったので素直にしたがってしまった。 俺がつれて来られたのは裁判所のような部屋だ。上の方に偉そうな人が座っている。 「罪人である貴様の罪は、勇者様ご一行の殺人。勇者様ご一行は世界で唯一、魔王を倒すことが出来るお方だった。それをお前が殺した。よって、死刑に処する」 俺は死刑か。この人肉で出来た神聖な体を殺すのか。なんて残酷なんだ。そのとき、天井を貫いて、悪魔のようなものが入ってきた。 「この人間俺がもらった!」 俺はそいつに羽交い締めにされ、そのまま飛び立ってしまった。 「お前何が狙いだ」 飛んでいる最中、大声を出して聞いた。 「魔王様がお前を呼んでいる。だから俺がお迎えだ」 魔王か、初めて会うな。緊張してきた。どんな姿なのだろう。 -魔王城- 「魔王様!勇者殺しの犯人つれてきました」 こいつが魔王?ヨボヨボのジジイにしか見えない。 「良くやった。そこにビスケットあるから食べなさい」 ご褒美もじじくさいときた。なんだこいつ。 「勇者殺しのお主、ワシはもう年じゃ。魔王を引退しようと思っておる。そこで、いい後継者は居らんかと探していたら、勇者を殺した人間がいるというではないか。勇者の魂というのは、肉体が滅びてもまた別の肉体に移動するのじゃ。それは他の仲間にも言えることじゃ。魔王は自分の肉体を使い続け、滅びるならば後継者を見つけねばならない。5000万年も生きておれば様々なものがおった。そのなかでもトップクラスに才能があったのがお主じゃ。どうか魔王の後継者になってくれぬか」 魔王の後継者か、悪くないな。だが最も大切なのはこれだ。 「魔王になれば、部下が人を殺して、その肉を持ってきてくれることは出来るのか?」 「わけないことじゃろう。すぐに持ってきてくれるぞ」 そうか、ならば答えはひとつだ。 「魔王になる。だからな」 俺はナイフを構えた。 「な、なにを!ぐは!」 魔王をぶっ刺した。すると魔王は、黒い霧となって消えていった。 「...今日から俺が魔王だ!逆らうやつはぶっ殺してやる!」 俺はそばにいたモンスターたちに言った。するとモンスター達は歓喜の声をあげた。俺は疲れていたので、魔王の玉座に座り深い眠りについた。
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