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二
「若旦那様」
「おめェ、よくも余計なことを言いやがって! 誰に食わせてもらってると思ってんだ! 学もねぇオメェのことを!」
若旦那と呼ばれた男は大股でこちらに近寄ってくる。
小鳥遊は茫然とその場に立ち尽くしていた。とくに、インカイはまるで怯えた子供のように益々体を丸めて彼が近寄るのをおとなしく待っているようだった。
「また余計なことを言ったら今度こそ出てってもらうからな? わかってんのか? あ? おめェも、なんだ? 使用人か? よくもそんな派手なカッコして、バカにしとるんか?」
「い、いいえ。めっそうもありません」
と、言いながら洋装していた小鳥遊は内心毒づいていた。
学がないといいながら、その外見はよっぽど若旦那の方がひどい。
上等そうな着物は汚れ、着崩れている。顔も洗っていないのか垢に肌の色が変わっている。それだけではない、酒と汗、そして加齢臭が余計に不快さを際立たせた。
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