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朝起きて真っ先にカーテンを開ける。眩しい光に襲われると視界が真っ白になった。徐々に目が慣れてくると景色がはっきりと見えてくる。
全身ピンク色のパジャマを着たまま、朝食を食べるために一階に降りる。食卓には既に母の作った料理がテーブルに並べられていた。
「早く食べちゃいなさい」
急かすような母の声に返事をして食事を摂り始める。食卓には父の姿は見当たらない。
「お父さん。もう出掛けたんだ」
私の質問にキッチンで調理器具を見つめていた母が背中を向けたまま答える。
「そうね。朝食も食べずに行っちゃったわよ」
母はそんなこと気にも留めていないという口調だ。父はかなり仕事が忙しいらしい。最近はほとんど喋る機会もなかった。
母も席に着き食事を摂り始めると、残念そうな顔をして私に話しかけてきた。
「ごめんね。入学式いけなくて」
「高校生なんだから来る必要性ないでしょ。それに仕事あるんだから、そっち優先しなくちゃ」
「だって、娘の晴れ舞台だもん。見ておきたいじゃない」
うちの母は結構、親馬鹿かもしれない。高校の入学式が晴れ舞台とは私には到底思えなかった。それとも親になると母のような気持ちになるのだろうか。
食事を終えて洗面所に向かうと、寝癖直し用のスプレーを髪に吹きかけてから、ブラシで髪を梳かす。鏡でしっかりと髪型を確認してから洗面所を出た。
自分の部屋で制服に着替えると、黄色いナップザックを持って玄関前に向かった。
「それじゃ行ってくるね」
母の「いってらっしゃい」と言う元気な声を聞いてから、私は玄関の扉を開けた。
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