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五歩くらい歩いたところでテーブルにたどり着く。トレーをテーブルに乗せると、ふうっと深く息を吐いた。今まで息を止めていたことに気がつく。
イスに腰掛け、トレーに乗っていたスプーンを手に取る。そして、トレーの上を眺める。
「今日の食べ物を教えて」
《本日のメニューは、オムライス、サラダ、わかめスープです》
「ふーん」
一番大きな皿に乗っている黄色い塊をスプーンでつついた。
「これが『オムライス』?」
《そうです》
「サラダは知ってる。でも、前に見たサラダと違うね。前のは『ポテトサラダ』だっけ?」
《そうですね》
「どちらもサラダなの?」
《はい》
「こんなに見た目が違うのに?」
《はい》
「ふーん、不思議。で、この液体は何だっけ?」
《わかめスープです。緑のが『わかめ』で、味のついた液体のことを『スープ』と呼びます》
「わかめが入ったスープってことね」
《その通りです》
「へえ。私の知らないことばかり」
《そうですか》
「どうしてあなたはそんなに言葉を知っているの?」
《さあ、どうしてでしょうね》
「私もいろんな言葉を知りたいな」
返事はない。聞こえなかったのだろうか。
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