1.白、世界

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 五歩くらい歩いたところでテーブルにたどり着く。トレーをテーブルに乗せると、ふうっと深く息を吐いた。今まで息を止めていたことに気がつく。  イスに腰掛け、トレーに乗っていたスプーンを手に取る。そして、トレーの上を眺める。 「今日の食べ物を教えて」 《本日のメニューは、オムライス、サラダ、わかめスープです》 「ふーん」  一番大きな皿に乗っている黄色い塊をスプーンでつついた。 「これが『オムライス』?」 《そうです》 「サラダは知ってる。でも、前に見たサラダと違うね。前のは『ポテトサラダ』だっけ?」 《そうですね》 「どちらもサラダなの?」 《はい》 「こんなに見た目が違うのに?」 《はい》 「ふーん、不思議。で、この液体は何だっけ?」 《わかめスープです。緑のが『わかめ』で、味のついた液体のことを『スープ』と呼びます》 「わかめが入ったスープってことね」 《その通りです》 「へえ。私の知らないことばかり」 《そうですか》 「どうしてあなたはそんなに言葉を知っているの?」 《さあ、どうしてでしょうね》 「私もいろんな言葉を知りたいな」  返事はない。聞こえなかったのだろうか。
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