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最終章
「うわぁ〜!暑い!」
慌てて窓を開けて空気を入れ替える。
一応、このマンションは時々、業社さんを入れて定期的に綺麗にしていたのですぐにでも住めるようにはなっている。
エアコンのスイッチを入れて、窓を開けて換気をしながら食器棚を覗き込む。
自分達が愛用していた物以外は、全て置いて来たからほぼそのままになっていて、なんだか安心した。
「此処で暮らすとしたら、兄さんは母さんの部屋を使う感じだね」
そう言いながら、母さんの部屋の窓を開ける。持ち主を無くした部屋は、なんだか寂し気に見えるのは気のせいかな?
ベッドは粗大ゴミに出してしまっていたので、来客用の布団を出して天日干しをする。
「葵、半分やるよ」
そう言って兄さんが冬用の掛け布団をベランダに干して、汗を拭う。
シャツの肩口で汗を拭う姿にドキドキしてしまっているのは秘密にしておこう。
シーツも洗って、いつでも泊まれるように準備していると
「それにしても…家出用に此処を売らなかったという母さんにはビックリだよな」
そう呟く俺に
「まぁ、結婚しても、逃げ場がある方が女性は良いのかもしれないな」
と言って兄さんが窓を閉め始める。
エアコンの冷気が部屋をゆっくりと涼しくしてくれる。
中味が空っぽの冷蔵庫の電源を入れて、冷やしておいたペットボトルのお茶を兄さんに差し出す。
兄さんはエアコンの下で涼みながら、渡したペットボトルの口を開ける。
「でも…母さんにはびっくりしたな」
ぽつりと呟く兄さんに
「俺も思った!まさか、母さんから言い出すとは…」
そう言って兄さんの隣に座る。
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