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帰り道
「結局、蒼介に邪魔されまくった夏休みだったな…」
溜息混じりに呟く兄さんに苦笑いして
「でも…俺にとっては、忘れられない夏休みになったよ」
そう言って微笑んだ。
見つめ合う瞳。
残念ながら人が多い通りだから、俺達はゆっくりと手を繋ぐ。
「兄さん。今日、布団を取り込んだから、明日、又行く?布団がフカフカだよ」
「なんかそれ……ヤリに行くみたいで…ちょっと……」
真っ赤になる兄さんの顔を覗き込み
「良いじゃん、ヤリに行くんでも…」
って微笑むと
「だ……ダメだ!それに、又蒼介が来るかもしれないし」
と狼狽える兄さん。
本当に……こういう所が堪らなく可愛い!
愛しいという感情を、見せる事が出来たら良いのに…って思う。
「あ!葵、夕日…」
駅のホームから見えた真っ赤な夕日が、夏の暑さで揺れて見える。
いつだったか、2人で見た夕日も綺麗だった。
春夏秋冬と幾つも季節が巡ったとしても、俺はあの日に見た花火を忘れない。
そして、これからも兄さんと2人、空を真っ赤に染める夕日を何度も見たいと思った [完]
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