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花火大会
その後、仲直りして部屋に戻ると、蒼ちゃんと章三が不満気に
「もう、仲直りしたの?」
って、ボヤいていた(苦笑)
「あ!でも、今日は蒼ちゃんと同室のままで良い?」
と言うと、兄さんが嫌な顔で。
蒼ちゃんは嬉しそうに
「え!」
って叫んだ。
蒼ちゃんは俺を抱き締めて
「勿論だよ!今日は一緒に寝ようね~」
と言いながら、俺の頭を撫でている。
兄さんは嫌そうに
「俺、田中と同室になるのだけは嫌だ!」
そう言い出した。
「酷いですね…。翔さん、久しぶりに一緒に寝ましょうよ」
って、田中さんが兄さんを後ろから抱き締めると
「止めろ!気持ち悪い!」
心底嫌そうな顔をする兄さんに、田中さんは楽しそうに後ろから羽交い締めにしている。
「昔は『陽兄ちゃんと寝る~』って、言ってくれたじゃないですか」
頬擦りする田中さんの顔を必死に剥がし
「葵がダメなら、荻野。お前が」
と言いかけた兄さんの言葉を
「俺、章三以外とは同室にはならない」
って、一刀両断。
「だったら、俺はロビーで寝る!」
「翔さん、本当にツンデレなんですから。そんなに喜ばれると、照れますよ」
って、田中さんがめちゃくちゃ兄さんにじゃれてる。
その顔は楽しそうで、田中さんはなんだかんだ言って兄さんが可愛くて仕方ないんだろうなぁ~。
だから、蒼ちゃんがヤキモチ妬いちゃう訳ね…。
俺が苦笑いして見ていると、蒼ちゃんも苦笑いしていた。
田中さんと一緒に暮らし始めたからなのか、蒼ちゃんはあまりヤキモチを妬かなくなったみたいだ。
以前の蒼ちゃんなら、こんな田中さんを見たらご機嫌ななめになっていただろう。
「陽一さん。その辺にしないと、本気で翔に嫌われるよ」
呆れた顔で蒼ちゃんが言うと
「つまらないなぁ~。翔さん、素直になってくれれば良いだけなのに…」
って、田中さんが呟いた。
「俺はいつだって素直だ!」
「またまた〜。本当は、葵さんと蒼介さんみたいにしたいくせに」
ご機嫌な田中さんに、俺が思わず笑ってしまうと
「葵、何笑ってるんだよ」
って、兄さんがふてくされている。
「兄さん、たまには田中さんと親睦を深めた方が良いよ」
と言うと
「葵まで!本当に勘弁してくれ!」
って、嫌そうに呟いている。
「仕方ないな〜。じゃあ、俺が田中さんの部屋に行くよ。蒼ちゃんと兄さんで同室になれば?」
試しにそう言うと、蒼ちゃんと兄さんが声を合わせて
「それは絶対にダメ!」
と叫んだ。
俺と田中さんが顔を見合わせると
「どっちでも良いよ。だったら、俺と葵で同室ってのは?」
そう章三が呟くと
「お前…さっきの俺の言葉を忘れたのか?」
って、荻野先輩が怒ってる。
「じゃあ、やっぱり僕とあおちゃん。翔と田中さんで」
と蒼ちゃんが言うと
「お前は田中と同室。俺は葵と同室。それで問題無いだろう!」
って兄さんが言い切って話を終わらせてしまった。
「全く…翔は我儘だな!」
蒼ちゃんはそう呟くと、自分の鞄を持って立ち上がった。
すると田中さんがさり気なく荷物を蒼ちゃんから預かり
「では、部屋に持っていきますね」
って、微笑んだ。
(おお!さすが田中さん。ジェントルマンだ!)
俺が尊敬の眼差しを向けていると
「あ!そう言えば、明日、旅館の裏の神社でお祭りがあるらしいよ」
って、章三がパンフレットを開いた。
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