花火大会

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「お祭り!」 思わず目を光らせると 「最後に、湖で花火を打ち上げるみたいだな」 章三はそう言って、俺にパンフレットを見せてくれた。 「おぉ!楽しそう!」 ウキウキして呟くと 「お祭りってさ、それだけで楽しくなるよね」 って、蒼ちゃんも微笑む。 「明日、浴衣のレンタルもあるみたいだな」 章三と俺、蒼ちゃんで盛り上がっていると 「なぁ…。お前ら浴衣着られるの?」 って、荻野先輩が呟いた。 「女性物とは違うから、誰でも着られるんじゃないのかな?」 蒼ちゃんが呟くと、章三が目を光らせて 「いざとなりゃ、翔さんが居るし」 って言われて一同頷いた。 「私は普段着のままで良いですよ」 と、苦笑いする田中さんに 「え!僕、陽一さんの浴衣姿好きだから、見たいです」 の鶴の一声で、田中さんは苦笑いしていたけど、みんなで浴衣で夏祭りに参加となった。 「楽しみだなぁ~」 ワクワクしている俺に、兄さんがクスクスと笑っている。 「葵は、お祭りとか大好きそうだもんな」 そう言われて頬をふくらましながら 「兄さんは嫌いなの?」 って聞くと、少し考えて 「祭りって、行った記憶が無いな…」 と答えた。 「1人で行く場所じゃないし、子供の頃は迷子になりそうな場所には連れて行ってもらえなかったしな」 そう答えた。 「そう言われれば、翔さんとお祭りに行ったのは小学校上がる前でしたね」 田中さんがぽつりと呟くと 「じゃあ、明日がある意味祭りの初体験?」 章三の言葉に兄さんが小さく笑って頷いたので 「じゃあ、凄く楽しい思い出にしようね」 って、俺は満面の笑みを浮かべて指切りした。 その様子を見ていた蒼ちゃんは 「まぁ…翔の場合、あおちゃんが居ればそれだけで幸せだよ」 なんて言うから、恥ずかしくなってしまう。 「出店、たくさん出るかな?」 「どうでしょうね?」 「りんご飴!金魚すくい!」 「焼きそばも良いよな」 「綿あめとか?」 「俺は射的がしたい」 部屋でみんなではしゃいでいると、兄さんが楽しそうにクスクスと笑っている。 「最後の花火も楽しみだね」 俺が兄さんに微笑んで言うと 「部屋からでも見られるらしいよ」 って、章三がパンフレットを指さす。 「じゃあ、私達は部屋で見ますか?」 田中さんが蒼ちゃんにそう呟くと 「俺と章三は部屋だな!」 と、荻野先輩が叫ぶ。 「何でだよ!」 「はあ?ダラダラ外歩いてて、楽しいか?」 って、荻野先輩が言っている。 田中さんは、絶対にビール片手にのんびりしたいだけだろうけど。 俺達はどうしようか?と、兄さんを見上げると 「さっきのベンチで見ようか?」 そう言われた。 「空いてるかな?」 と呟くと 「明日の朝、交渉してみるよ」 って兄さんが答えた。 付き合って初めての花火大会。 期待と希望で、胸が高鳴っていた。
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