アイノカタチ

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「おおおおいいぃぃ⁉︎なんで嫁かっ!嫁っぽいことしてるけども‼︎」 海堂幸時が学園から帰ってきた所は全寮制であり、生徒会役員と風紀委員会のメンバーは一般寮と違う建物だ。高さ6階まであり、1人1人ワンフロア使用出来る。 Aは自分が帰った後の出来事を海堂幸時に教えられ、持っている杓文字を投げたくなった。それを我慢して、2つの丼に炊き上がった米をよそう。そのご飯の上に作っていた生姜焼きを乗せていく。紅生姜を少し器の隅に。 千切りキャベツ、薄切り胡瓜、ヘタを取ったプチトマトのサラダとごまドレと青じそドレのボトルもテーブルに並べる。里芋の煮っころがし、甘辛きんぴら、焼きししゃもは小鉢に盛り付けて。 後は飲み物や箸をセットすれば、食べるだけ。向かい合わせに座って「頂きます」を仲良くする。 話は萩原拓人がなぜこの学園でポヤポヤしていられるのか。 「知らなかったっけ?ストーカーが5人いるん“タン”」 Aの右手側テーブルに突き刺さるクナイ。に結ばれる紙。Aはその紙を外し、中身をーー読んだ。海堂幸時はクナイを見て、少し感動した。 「忍者⁈なぁ?忍者か!」 “我々はストーカーでは断じてない!!!”と、書かれてある。 「覗き魔“タン”ーーーでは断じてない!!!!って」 「忍者がいるのか⁉︎」 海堂幸時はキョロキョロと部屋の中を見回すが見つからない。Aは海堂幸時を見て微笑み、クナイを持ち主に投げ返す。 「痛っ!!」 Aの背後から額から血を流しながら、姿を現したストーカー。基、覗き魔。基、忍者斑目主水。 「不法浸入が追加されている」 「ナンダッテーーー‼︎」 「さぁもう帰っていいぞ」 「早いっ!報告ぅぅ」 「萩原が無事なのはお前が遊んでいる時点で分かった」 「ひどぉ〜い」 斑目主水、時代劇で見る忍者、黒装束を身に纏いAと同じ身長で、男らしかったり、女らしかったりしている。 海堂幸時は目をかっぴらいて硬直している。忍者の理想像が破壊された為。 「で?食事中にやってきた理由は」 「2つある。1つは不穏分子が動く」 「そうか」 「もう1つは」 「ーー」 「見せろ!2人のセックスしてる姿を!!!是非とも!目の前で!!お願いしますっ!!!!」 「帰れ」 「無情っっ」 斑目主水にとっては入れない場所はない!と強く言いたいが、生徒会の奥部屋も海堂家の幸時の部屋も勿論この部屋へも入れない。 海堂幸時が帰宅したすぐ後ろに居て、入ってきた。ヤッホーと喜び、イチャイチャ見放題だと思ったのに、普通にキスもせず、食事が始まったのにがっかりした。腹減った。 Aからの悪口を言われ、言い返したら、攻撃を受けた。それで直談判したものの素気無く却下。撃沈している所、ベシベシ頭を叩かれた斑目主水は顔を上げた。 Aの笑顔を真正面から見て、斑目主水もぱぁああと顔を明るくした。 「get out」 玄関に指を指して言われた。涙した斑目主水。 「無駄に発音よくしなくても!!ヒドいッ!イイもんイイもん!寝室に‘ピンポーン’……」 ドアホンが鳴る。 斑目主水の顔色が悪くなる。 Aがドアに向かって歩き出す。 海堂幸時は首を傾げる。 「ちょっ⁉︎あっ開けたらぁ〜殺されるからぁぁぁ」 斑目主水の慌てふためく言動など意に反さず、ドアを開けるA。そして開けた先にはキンキラ金髪オールバック、目は細くつり目で鼻筋は高く整い、唇は薄く。いつも口角は下がって眉間には皺が刻まれていて、学校一恐がられている人物、宇崎総寿。 宇崎総寿はAを見て、目を更に細める。 「連絡助かる」 「いや、こっちも助けられてるしーーアレ邪魔なんだよね」 宇崎総寿はAから視線を変え、斑目主水に向ける。斑目主水が小型犬の様にプルプルカラダを震わせて、海堂幸時の背後からこっちの様子を伺っていた。宇崎総寿は斑目主水が海堂幸時の側で震えている姿に舌打ちしそうになる。 「早く来いバカ犬」 「ぴィイっ」 宇崎総寿の低い声に変な声が出た斑目主水。泣きたい。Aは笑いたい。 宇崎総寿は斑目主水を一瞥して部屋の外に向かい歩き出す。自分ではない男の側にいる姿を見たくない。 視界から消えた宇崎総寿。斑目主水はきょときょとし、ハタっと動きを止めたと思ったら、両手を突き出した格好で慌てて、やっと海堂幸時の部屋から出て行った。 静かになった部屋のドアが割と大きく音を立てて締まった。自動ロックである。 Aが振り返ると、Aが座ってた椅子に海堂幸時が座っていた。 「食べ終わってないんですけどー」 「ここで食べればいい」 自分の太腿を叩き招く。Aはスススーッと海堂幸時の太腿にストンと座り、パカっと口を開ける。食べさせろの意味。海堂幸時はなんの戸惑いなくスプーンを手に取り、生姜焼き丼を掬い、Aの口の中に入れた。口を閉じて、スプーンを引き抜かれると顎を動かし始める。 「宇崎と忍者はルームメイトなのか」 「…宇崎って…学園の小動物保護団体に所属してるんだ……あー」 Aは次のご飯を催促する。 「ーー聞いたことねぇぞ?学園⁇小動物…」 「ん。プルプル震えてたじゃん?あーゆーのがたまらなく可愛くて、守ってあげなくちゃ症候群なんだよ、宇崎って」 「そんな病名聞いたことねぇ」 「まぁまぁ。良いじゃないの〜グンと、強姦事件が減ったんだよ。未遂で終わる事が出来てる」 「ーーそうか」 「そう。因みに2人は無自覚の両想いなんだ」 ニヤニヤと笑うAを見て海堂幸時はまたかと思う。 「ーー引っ掻き回すなよ?」 「ははっ」 「笑って誤魔化すな」 「だってココ卒業したら終わるカップル何組いると思う?」 「ーーーーお前は一体何の心配してるんだ?」 「……」 ご飯を平らげて、コップ一杯の水を一気飲みする。 「いやぁだって、大学生とか社会人になったら周りに異性が発生するじゃん?」 「虫的な感じだな?」 「オレにとっては蟲ですけど?」 じと目でAは海堂幸時を見る。Aにとって、海堂幸時に群がる男女は蟲である。性的な意味を持てば、害虫認定だ。哀しいかな、ほぼ害虫に当たる。 許しているのは海堂幸時の血の繋がりある家族のみ。 「昔も今も、これからもお前にしか興味がないと言っても…お前はーーー綾人は信じないんだろう?」 「ーーーー」 力強く黒い瞳がAを見つめる。そんな海堂幸時にAは、眉を八の字にして困ってように笑うーーーー。 ぴー.えす. まだらめもんど君はけっして職業;忍者ではありません。
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