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そう思い続けて三年。僕は六年生になった。近所の人に手伝ってもらいながら、じいちゃんの畑を生かしている。学校の先生も僕が畑の世話をすると学校を休んでも仕方なく許してくれる。大人の手を借りてはいるが、じいちゃんの畑はもう僕の畑だ。
必ずサロマは帰ってくる。それを疑った日はなかった。六年生の七月のある日。それは予感だったのかも知れない。ニュースで流星群が今夜見れると言っていたから僕は夜に畑にいた。
何となくじいちゃんを思い出しながら一人で夜空を見ていた。あまり遅くならなければ父さんも母さんも畑に夜来ることを許してくれる。
月のない夜は星がよく見える。一すじ二すじ、星が流れる。畑には僕だけ。木々のさわめき。梟の声。涼やかな風。民家の灯り。変わらないようで変わらないものはない。僕の背も大分伸びた。じいちゃんの畑は僕の畑になった。いじめは消えた。
色々と思い出していると懐かしい声が響く。
「泰介、背伸びたな」
僕がそちらを見ると二つの影。
「サロマも大きくなった?」
「当たり前だろ。三年経ってるんだぞ?」
「お嫁さんはどんな人?」
「それより何より先に言うことあるだろ?」
「サロマからね」
「仕方ないな。ただいま」
「おかえり」
僕の秘密の友達はちゃんと約束を守った。可愛いお嫁さんを連れて星降る夜に帰ってきた。
「僕が死ぬまで、ちゃんといるんだよ?」
僕がこの秘密を大切な誰かに打ち明けるまで側にいて。そう願って。
了
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