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執行者
更紗の執行はいつも夜、そしてナイフを使った。
ナイフと言ってもそれは12cm程の細い鉄串の様な形状だ。
黒尽くめで忍者のような出で立ちでターゲットの背後に音もなく近づき、頚椎の付根の中心を一撃する。
ターゲットは声もなく支えを失くしたカーテンのように一瞬の内にひれ伏し絶命する。
最初のターゲットは闇の金貸しだった。
少ない金を貸し出し金利もマトモに取り気軽さと誠実さを謳い文句に徐々に金額を膨らませて不当な金利と脅しで金や物品や不動産を奪い、人によっては身体で稼がせ使い物にならなくなると山に埋めるか海に沈めた。
この国の年間行方不明者は8万人以上で所在確認が7万人。
残り1万人の内、約4千人が死亡確認され3千人以上が不明のままなのである。
一体この金貸しの所業で何人が行方不明になりこの世から人知れず消されたのだろうか...。
この金貸しと接点があり行方不明になった佐伯という男の家族が裁判を起こし更紗はその家族の弁護をした事からこの金貸しの女を知った。
間違いなく女から借金をしてその見返りの仕事をさせられたのだ。
元々は不審船が拿捕され金塊を不法所持した2人の男達が逮捕され、その依頼者が佐伯だという事だった。
逮捕された2人も佐伯からの依頼である事を認めた。
数十回依頼があり、これで最後と言う事だったがそれから行方不明となった。
結局、女とは顔見知りではあったが金塊の運び屋の証拠は全く無かった為に佐伯の単独犯が確定し家族は犯罪者一家の汚名を着せられ町を出て行った。
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