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面会に行く事自体 会社からは大反対された。
連日報道されるサララの事件は日に日に追悼の波が広がり犯人を公開処刑しろとまで叫ぶ時代錯誤な連中まで現れた。
サララを失った喪失感は彼女をあまり知らない人まで連鎖し犯人に対して異常なほど過激になっていた。
それでも更紗は面会の申請をした。
長谷部は勾留され検察官の取り調べでも全て犯行を認めていた。
しかし何故サララが長谷部を招き入れたのかハッキリしていなかった。
警察や検察の調べでも曖昧なままだった。
更紗は面会室の椅子に座って待っていた。
奥のドアが開き長谷部堅一は頭を項垂れて入って来た。
両手を拘束され俯いたままパイプ椅子に腰掛けた。
更紗は机に広げた長谷部のプロフィールを確認しながら顔を見た。
何度となくTV、ネット、雑誌で見た顔がそこにあった。
しかし白髪交じりの薄くなった髪を垂らして俯いたままの彼はまるで老人のように疲弊して見えた。
それはそうだろう...
自分の娘ほどの女性を...
多くのファンを持つアイドルをレイプして絞殺したんだから...
もっと苦しめば良いんだ...
弁護士として決して心に置いてはいけない言葉...
でも更紗は心からそう思った。
気付くと更紗を長谷部が見つめていた。
心を見透かされてしまったと思うほど目をそらす事なく凝視していた。
その内にボトボトと大きな涙を溢し始めた。
更紗は今更泣いてどうなると思いながら首にかけた身分証を見せながら、
「わたしは弁護士の悠木と言います。
名前は長谷部堅一さんで間違いないですか?
年齢と職業をお答え下さい。」
更紗は感情のない低い声で聞きながら後悔し始めていた。
やはり来なければ良かったと...
すると長谷部が声を詰まらせながら、
「サラサ...」
と呟いた。
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