長谷部堅一さんを探せ

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「あら、2人揃って旅行でも行くの? 珍しいわね。 サラサはお仕事大丈夫なの? さくちゃんも...」 エプロン姿の美代が玄関口で2人を呼び止めた。 「お母ちゃん...探したよ。 どこに行ってたの? 2人共 色々あったからたまには気晴らしにと思って。」 「ちょっとお店に行ってたの... そう...さくちゃん大変だったもんね。 でもサラサ...お仕事で何かあった? 順調だとは思うけど...」 「うん、順調だけど色々あるの...色々。」 「そう、いつ帰るの?」 「2泊位はすると思う。」 「じゃ、気を付けるのよ。 メールで写真上げてね。」 「うん、行ってきます。」 2人は品川からのぞみのグリーン車に乗った。 サラサは変装していたが何人かに声を掛けられた。 車内では2人の周りに殆ど人はいなかった。 「ねえサラサ...聞いていい? わたし...レイプ事件に巻き込まれたよね。 だから美代さんも気を使ってるんでしょ?」 桜子がサラサの耳元で囁いた。 「うん、そうだね...この時間軸はチョット違うけど。」 サラサも小声で言った。 「え!どう違うの?」 「レイプされそうになった...って事。 襲われそうになったけど未遂で終わった。」 「そうなの! どおりで... 会社行った時も何か違和感があったし美代さんも幸谷さんも。」 「でもチョットだけ裏があるけどね。」 サラサは桜子をドヤ顔で見た。 「まさか...2人で助けてくれたの?」 「うん、サララがどうしても何とかしたいって聞かなかったから。 わたしはあまり色んな時間軸に行って変えない方が良いって言ったんだけど、サララは絶対に防ぐって... でもそれは正解だった。 ただあの娘は自分の事より他人の事を優先するでしょ。」 サラサは涙を滲ませながら流れて行く風景に目をやった。 「あの娘はそういう娘...」 桜子も目頭を押さえた。 「...あっ、きれいな富士山。 雲ひとつ無いよ。」 サラサは新幹線の車窓に額を付けながら涙を隠した。 「きっとサララには会えるよ。 ううん、会わなきゃ。 あの娘...待ってる気がする。」 新幹線は空気の壁を残しながら超高速で2人のハヤる気持ちに応えた。
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