長谷部堅一さんを探せ

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研究室のドアには長谷部研究室という古びたプレートが貼ってあった。 入室すると少しカビ臭く所々ほつれたソファーに案内された。 「こんな物しかありませんが。」 長谷部はお茶を運んで来た。 「長谷部さん...いえ、教授?。 わたし達が知る方なら良いんですが。 きっと驚きになりますよね。 突拍子も無い事なので。 わたし達...もうどうして良いのか分かんなくて。」 桜子が力なく言った。 「長谷部で良いですよ。 わたくし驚きもしないし突拍子も無い事でもありません。 ずーっと待っていたんです。 皆さんがここに現れる時を。 大体の時間は分かっていましたが、月日は分からなかった。 でもその時が来たんだと... お2人を見つけた時は鳥肌が立ちました。 そして嬉しかった。 サラサさんに桜子さん。」 「あの長谷部さんですよね。 見た瞬間そうかもって思いました... けど大学教授をなさってる長谷部さんをわたし達は知らない。 だからわたし達の事も記憶に無いかと...」 桜子は不可解な顔をした。 「ええ、私もつい最近までは普通に教壇に立っていましたが、ある日を境に色んな画像が降ってくるようになり、時には夢なのか現実なのか分からなくなる程の体験をしました。 そして繋がったんです。 幾つもの過去の記憶を持ち合わせていると...」 「じゃぁ話は早いですね。 わたし達がここに来た理由もご存知ですよね。 良かった、長谷部さんが居てくれたらサララを救い出せる。」 サラサは目を輝かせながら彼を見た。 「いえ、もう私は無力です。 私はもう時間軸を渡り歩く事は出来ないんです。 これまで様々な事象に多く関わってしまったせいで時間軸が混在し始めています。 つまり多岐に渡る時間軸が一つに成り始めている。 私が行った過去は1つ1つが違った時間軸として私達の周りに存在しています。例えばサークルであったり、フラッシュであったり。 ですから私が変えてしまった過去は残り続けていたんです。 ですが... 無限には存在出来ない... いま時間軸は正常な1つの時空を求めているようです。 だからお2人の記憶が消えてしまったり体調にも影響してる筈です。 下手すると消滅してしまうかもしれません。 多分 私が記憶を取り戻した頃から時間の統合が始まったんだと思います。」
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