あの場所へ

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「すみません... 奥様はここにお住まいの方とお見受けしますが、 失礼ですが、サララって娘... ご存じないですよね? わたし達...探しているんです。 その娘を...」 サラサは恐る恐る聞いてみた。 「サラサ、この世界には居ないんだってば...」 桜子はサラサを肘で突きながら小声で言った。 「んん...サララさん? 懐かしいと言うか... 寂しい響きね。 あの娘が生きてたらきっとあなた達と同じくらいかしら... サララさんじゃないけど、サランって名前だった。 人違いね。残念だけど... 中1の時に遠くへ行ったの... って言うか... いつもここには居るんだけどね。」 婦人は胸を押さえながらサラサを見た。 「でもあなたを見てるとサランが帰って来た様に感じるわ。 何処と無く似ているのかしらね...」 婦人は目を伏せた。 「サランさんのお写真とか... お持ちではないですよね。」 桜子はサランと聞いて確信しながらも思い切って聞いた。 「まあ... 偶然かしらね... いつもは持っていないんだけど... 今日はあの娘に会いに行く日だから持ってるわよ。」 婦人は手提げバッグを撫でた。 「よろしければ見せて頂く訳にはいきませんか?」 今度はサラサが言った。
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