あの場所へ

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「お断りよ...見も知らぬ人に! 冗談じゃないわよ... って言いたいけど... あなた達には許せる気がする... ただし、私にもお願いがある。 あなたの子供の頃の写真... 持ってる... 訳... 無いわね...」 婦人はサラサにそう言いながらバッグから写真を取り出して見せた。 桜子には分からなかったが、まさにサラサの子供の頃とソックリだった。 サラサは心の中でサララ...サララ...叫び続けた。 涙ぐんだサラサを見て察した桜子も目頭を拭った。 「お2人共... 早く見つかって会えると良いわね... その娘さんに。 何だか今日は娘が遊びに来たみたいで嬉しかったわよ。 じゃあ失礼。」 婦人は軽くお辞儀をして車に乗り込もうとした。 その時サラサがスマホを婦人に見せた。 「何だか双子みたいに似てます。 ビックリしました。」 サラサは冷静に言った。 「こんな事って... こんな事って... サランに瓜二つ... 私のサラン... 娘が巡り合わせてくれたんだわ。 ...また遊びに来てくれるかしら... 今度はゆっくり...」 婦人はスマホを握りしめたままサラサに呟いた。 「はい、約束します。 また必ず会いに行きます。」 サラサは婦人の手に触れながらハッキリした声で言った。 車はゆっくりと動き始め大きな黒い車体は遠ざかって行った。 「サラサ、あんな事を約束していいの?」 「うん、また絶対会えるし何て言ってもわたしのお母ちゃんだもん。」 2人は手を繋ぎ、目を閉じたまま願い場所へと祈った。
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